2011 Fiscal Year Research-status Report
バイオポリマーの合成増強を目指したモノマー供給酵素の進化工学
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23710102
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 剛志 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (40599601)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アセトアセチル-CoAレダクターゼ / 3ヒドロキシアルカン酸ベースポリマー / 進化工学 |
Research Abstract |
当該年度に実施した研究は、1)エラープローンPCRを用いて作成した変異体ライブラリーからのハイスループットスクリーニングによる変異体PhaBの取得, 2)Q47、およびT173の変異部位に対するアミノ酸置換, 3)取得された変異型PhaBの酵素学的性質、およびポリマー合成, 4)取得PhaB変異体をコリネ菌に組み込むことにより合成されるポリマー分析の項目に対して研究を行った。1)に関しては、残念ながら現在のところ先行実験で得られたQ47L、T173S以外は得られていない。2)PhaBの優良変異部位であるQ47、T173に対して、それぞれ全種のアミノ酸置換を施し、これら変異体の酵素活性とポリマー蓄積量に与える影響を調べた。Q47、T173の何れにおいても、スクリーニングで取得されたQ47L、T173Sが最も高い活性を示した。膨大なクローン数(推定100,000個)に対するスクリーニングの段階で、かなりの程度最適化されているものと考えられる。3)Q47L、T173Sの活性の向上は、分子活性、基質(アセトアセチル-CoA、NADPH)に対する結合性のどれに起因するかを明らかにするために速度論解析を行った。何れの変異体も野生型と比べて、kcat値が向上しており、分子活性の向上が活性上昇の主な要因として考えられる。また、T173Sにおいては、アセトアセチル-CoAに対するkcat/Kmが向上しており、アセトアセチル-CoAの親和性も向上していた。4)高活性PhaBであるQ47LおよびT173Sをバイオポリマー生産菌として有望であるコリネ菌に導入し、ポリマー蓄積に与える効果を調べた。その結果、両変異体を用いることで野生型と比べて2倍のポリマー蓄積が見られた。したがって、高活性化PhaBは、多様なプラットフォームへ応用可能であり、ポリマーの生産性の向上に寄与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、研究実施計画に基づき、計画通りに各研究項目を実施しており、概ね達成している。本研究課題の大きなヤマは、変異体の取得である。しかし幸運なことに、先行実験において、Q47LおよびT173Sが得られていた。これら高活性化PhaBを調査したところ、ポリマー蓄積においても、酵素活性においても良好な結果が得られた。現在の課題は、新たな変異体の取得である。そして更なるPhaB高活性化とそれに伴い期待されるポリマー蓄積率の向上である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)さらなるPhaBの系統的進化工学残念ながら、新たな高活性化PhaBの取得は難航している。したがって、現在得られているQ47LおよびT173Sを鋳型として、再びエラープローンPCRによる変異体ライブラリーを作成し、サンプルの母集団を増やすことで更なる高活性化PhaBの取得を目指す。また、研究テーマを共有する他の研究グループが、野生型PhaBのX線結晶構造解析を進めており、Q47L、T173Sに関しても随時実施する予定である。提供される情報をフィードバックし、ランダム変異導入以外の変異導入の指針としたいと考えている。2)さらなる進化酵素のポリマー合成への利活用変異型PhaBの活性に対する3HBベースポリマーの3HB分率に与える影響を評価するために、これまで得られた変異型PhaBを、P(HB-co-HA)およびP(HB-co-LA)合成する大腸菌モデル系に導入し、HB分率の拡大幅を調べる。これまでのところP(HB-co-HA)の3HB分率は、進化型重合酵素によって、14%から70%の幅で得られている。高活性化PhaBを用いてさらなる3HB分率の上昇を目指す。一方、P(HB-co-LA)は、LA分率の向上が望ましく、3HBの供給を抑えたい。よって、低活性化PhaBを用いてLA分率の向上を目指す。そして、得られたポリマーに対して分子量を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者の所属研究室は、本研究の遂行に必要な遺伝子工学実験設備、微生物培養装置、酵素タンパク質の精製装置があり、使用可能な状態であった。そこで申請者の23年度の研究費の大部分は、設備備品費にではなく、消耗品に充てることができ、想定以上に本年度の物品費を抑えることができた。しかし、申請者が使用する装置の中には、経年劣化のためか使用不可なものが生じた(例、クロマトグラフィーのカラム、電気泳動槽や振盪器など)。したがって23年度の未使用額は、24年度においてはこれら装置に充てようと考えている。
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Research Products
(2 results)