2011 Fiscal Year Research-status Report
サブバンド準位を用いた高効率量子ドットレーザの開発
Project/Area Number |
23710158
|
Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
五島 敬史郎 愛知工業大学, 工学部, 講師 (00550146)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 電子デバイス・電子機器 / 半導体レーザ / 量子ドット |
Research Abstract |
本研究の目的は、量子ドット半導体レーザのレーザ発光層に、トンネル効果等の量子力学を利用したサブバンド準位を取り入れることによって、従来の量子ドットレーザに比べて消費電力を半分以下、変調速度を3倍以上に性能を向上できる半導体レーザを開発することである。本年度の研究計画:1、ドット間結合効果によるサブバンド準位の理論計算: 理論計算をするに当たり、まず量子力学の基本式であるシュレーディンガー方程式を本研究の条件に合わせて変形式を試みた。実際の形状は3次元であるので1次元方程式を3次元に拡張した。有限要素法に3次元に拡張した方程式を適用し、コンピュータを用いて解析した。その結果、バリア層が15nmを超えるような広い場合には、上下の量子ドット間に量子力学的な効果は働かなくなり、サブバンド準位が形成されないことが分かった。サブバンド準位は、バリア層厚が10nmを切る間隔より形成され始め、バリア層が薄くなるにつれてサブバンドのエネルギー幅も指数関数的に広がっていくことが理論計算より明らかになった。このことから、実際に積層量子ドットを制作するにあたっても、バリア層厚が10nm以下で製作する必要性があることが分かった。今年度の最も大きな成果である。2、積層量子ドットの作成:先の理論計算の結果より、3種類の積層量子ドット製作を依頼した。1つはバリア層15nm、もう一つはバリア層10nm、最後にバリア層3nmの3種類である。今後は、この積層量子ドットの発光特性を調べることによって、実際にサブバンド準位が形成されているか検証する。3、検証実験装置の立ち上げ:3種類の積層量子ドットを検証する光学実験装置の立ち上げを行った。具体的には、フォトルミネッセンス測定装置と発光寿命測定装置の構築である。これらの実験装置の構築は、順調に進み、初期データを取ることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究達成度は、おおむね達成されたと考えている。今年度は主に理論計算が主である。サブバンド準位が形成されるバリア層の厚さを見積もることは出来た。しかし、バリア層厚の最適解迄はには至っていない。その理由として、サブバンド準位エネルギーの幅と、外から電界が加わった場合の準位の計算が必要だからである。このサブバンド中での電界を考慮した理論計算までできるのが理想である。今後も引き続き理論計算は続ける予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、計算結果を元に産総研にて積層量子ドット製作を依頼した。今年度は、サブバンド準位の検証を行う。検証方法は、顕微分光発光法・透過スペクトル法及び 発光寿命による量子ドットキャリアの寿命測定を行い、サブバンド構造の可否を判断する。検証実験で用いる、顕微分光法・キャリア寿命は実験系は、昨年度おおよそ構築した。今年度は、理論計算の結果を検証実験を行う予定である。検証実験の項目として1.サブバンド準位形成を確認する。2.活性層の中の光利得を実験より算出する。の2点を主に進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、実験による検証を行う。実験装置は、昨年度おおよそ構築したが、まだ測定結果の信頼性が乏しいので、より精度を上げた測定結果取得を目指す。そのためには、昨年度構築した実験装置にいくつか手を加える部分が必要で、そのための追加での光学部品が必要である。また、結果を国内・国際学会で発表する事を予定しており、その費用が必要である。次年度は この2点が大きな研究費の使用用途になる。
|