2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710237
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
佐藤 昌直 基礎生物学研究所, 発生遺伝学研究部門, 助教 (20517693)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子ネットワーク / 発生 / 生殖細胞 / 不妊 |
Research Abstract |
本申請研究ではRNAiによる逆遺伝学、mRNA発現プロファイリング、多次元データからの特徴抽出・ネットワークモデリングアルゴリズムを用いて、動物の生殖細胞における遺伝子ネットワークを解明するものである。23年度はこのうち、RNAiによる逆遺伝学的解析が可能な材料、情報の収集・整備および遺伝子発現プロファイリングの条件設定を行った。1) 当初計画していたHarvard大グループによるショウジョウバエtransgenic RNAi Projectからの入手はHarvard大で目的の系統がすべて確立されていない状況であったので、形質転換体の作成から着手した。また、マイクロアレイを使った遺伝子発現プロファイリングに着手し、データの評価を進めている。2) 平行して、より簡便な生殖細胞遺伝子ネットワークモデリング系の開発に着手した。mRNA発現プロファイルは実験者や実験日などの環境要因に大きく影響を受け、各遺伝子に対するRNAi実験(サンプリング)を同時に行うことが好ましい。しかし、ショウジョウバエ個体からの生殖細胞単離はスループットが低く、複数遺伝子型からの平行サンプリングは不可能である。これを改善するべく細胞単離法を試行錯誤したが、解決に至らなかった。そこで平行サンプリングが容易である培養細胞に着目し、生殖細胞特有の性質を持つ培養細胞の確立、探索を行った。結果としてショウジョウバエ生殖細胞で見られる生殖細胞マーカー遺伝子を発現するカイコ卵巣由来の細胞株を得ており、この細胞を生殖細胞遺伝子ネットワークをモデルするための材料としての評価を進めている。この系が代替えの実験系として使用可能となれば遺伝子ネットワークモデリングに供するデータの質の向上だけではなく、研究の進展は飛躍的に加速化するため、当初の計画にはなかったが重要な実験として進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は、RNAiによる逆遺伝学的解析が可能な材料、情報の整備を行ったが、1) 当初計画していたHarvard大グループによるショウジョウバエtransgenic RNAi Projectによる目的の系統の確立の遅れ、およびストックセンターでの害虫の発生により、入手が遅れが生じた点、2) 複数の遺伝子型のショウジョウバエ胚から平行して始原生殖細胞を収集するのが困難で採卵日や餌のロットなどが原因と考えられるバイアス(バッチエフェクト)が観察されており、現状で可能な実験デザインでは統計的にバッチエフェクトを除くのが困難な状況にあるという2点により、研究手法の修正を行っているため、当初の計画よりも遅れが生じている。特に後者は研究提案前の少数の予備実験では予測不能であったため、データ収集のための実験デザインと統計モデルを見直す必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては以下の2つを早急に行う。1) 個体から単離した生殖細胞のmRNA発現プロファイルを解析する際の実験デザイン、統計モデルの改良を行い、バッチエフェクト(実験日などによるバイアス)と遺伝子型による影響との定量的な割合を確認する。2) 培養細胞系での全体的な遺伝子発現状態をmRNA発現プロファイルから確認する。また、5個程度の生殖細胞の発生・維持に必須なことが知られている遺伝子に対するRNAiを行い、その表現型を評価する。これらを平成24年度6月を目処に完了し、平成24年度前半はRNAiによる遺伝子機能阻害後のmRNA発現プロファイルの収集に集中する。mRNA発現プロファイルデータ収集を行いつつも研究展開をスムーズにするため、得られたデータから随時、暫定的な遺伝子ネットワークモデルを構築し、想定される仮説検証実験に備えて、ショウジョウバエ系統の入手など材料の整備は平行して進める。平成24年度後半には遺伝子ネットワークのモデリング・検証実験に着手する。培養細胞は培養細胞化による影響で完璧には個体からの生殖細胞と同じ状態にある訳ではないが、バッチエフェクトを回避しうる実験デザインが可能である。そのため、個体から生殖細胞を単離して用いる、バッチエフェクトを除きにくい実験よりも有効な可能性があるため、精力的に実験系として確立する方針である。また、両者を組み合わせた解析手法についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度前半から中盤にかけてRNAiによる遺伝子機能阻害後のmRNA発現プロファイリングを集中して行う。よって、平成23年度未使用経費および24年度にmRNA発現プロファイリング実験に予定していた経費がこれらの実験で使用される。また、学会、研究会での成果発表および情報収集のため、旅費として使用する。
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