2011 Fiscal Year Research-status Report
サンゴ-海草混合群落の形成に関与する活性物質の解明
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23710258
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
照屋 俊明 琉球大学, 教育学部, 准教授 (90375428)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | リュウキュウスガモ / エダコモンサンゴ / 混合群落 / 相利関係 |
Research Abstract |
同時性雌雄同体種であるエダコモンサンゴは胃腔内で親から褐虫藻が感染した卵と精子が形成され、それらが体外へ放出され受精、発生してプラヌラ幼生となる。プラヌラ幼生は数日から数か月間浮遊幼生期を過ごし、着底、変態を経て成体になる。成体サンゴは移動することが出来ないため、備瀬海岸で観察されるリュウキュウスガモとエダコモンサンゴの混合群落の形成には、エダコモンサンゴの浮遊幼生が深く関わっていると考えられる。そこでリュウキュウスガモ抽出物がエダコモンサンゴ幼生に対してどのような影響を与えるのか検討した。 2011年6月7日に備瀬海岸よりエダコモンサンゴを採集し、瀬底研究施設屋内にある海水オーバー・フロー水槽で飼育した。6月15日午後7時半、16日午後8時にエダコモンサンゴが産卵したため、当日中に受精卵をプラスチック容器に移した。また受精卵飼育容器の飼育海水は毎日90%以上入れ替え飼育した。 受精してから48時間飼育したエダコモンサンゴ幼生を用いて活性試験を行った。ガラスシャーレにリュウキュウスガモ抽出物、及びリュウキュウスガモ抽出物を細かく分画した画分を添加し、溶媒が蒸発するのを待って、そこに人口海水と浮遊幼生を入れた。その後27~28℃で2週間飼育し、24時間ごとにサンゴ幼生を観察した。サンゴ幼生の密度は1匹/ml、抽出物の濃度は0.1 mg/mL~1 ug/mL に調整し活性試験を行った。その結果、サンゴ幼生の着底、変態などは観察されず、リュウキュウスガモ抽出物にサンゴ幼生に対して毒性を示す化合物が含まれていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンゴ幼生とリュウキュウスガモの生物間相互作用に関与する化学物質を解明するためにはサンゴ幼生の確保が重要な課題となる。本年度の実験では、成体サンゴ飼育施設を琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設とし、その特徴を活かした飼育方法を考案することでサンゴ幼生を大量に確保することに成功した。活性試験用の成体サンゴは、長時間水槽内で飼育すると、環境の変化により産卵しない可能性もあるため、活性試験用の成体サンゴは、エダコモンサンゴの産卵期に沖縄県備瀬海岸付近で採集し、瀬底研究施設屋内にある海水オーバー・フロー水槽で飼育した。また水槽内のサンゴ成体は、水深 10~20 cm に調整した台に一定の間隔で配置した。以上の条件でエダコモンサンゴに大きなストレスをかけることなく飼育できたと考えられる。成体サンゴを水槽で飼育して約1週間後エダコモンサンゴは産卵し、大量の受精卵を確保することが出来た。得られた受精卵は受精卵飼育シャーレに移し、飼育海水を毎日90%以上入れ替えた。 受精してから48時間飼育したエダコモンサンゴ幼生を用いて活性試験を行ったところ、リュウキュウスガモ抽出物にエダコモン幼生に対して致死活性を示す化合物が含まれていることが明らかとなった。この化合物はリュウキュウスガモが付着生物から身を守るために役立っていると考えられる。今後はこの化合物の単離、構造決定、またサンゴ幼生以外の付着生物幼生に対する影響、リュウキュウスガモにおける含量とその季節変化を調べることで、リュウキュウスガモとエダコモンサンゴの混合群落形成について新しい知見を得ることが出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
リュウキュウスガモ抽出物にはサンゴ幼生に対して毒性を示す化合物が含まれていることが明らかになった。今後はこの化合物の単離、構造決定を行う予定である。また、これまでにタヤマヤスリサンゴ幼生の変態を誘起する物質として11-deoxyfistularin-3の単離が報告されている。この化合物は10-8 M 添加した場合の変態誘因活性が最も高く、10-6 M 添加した場合、ほとんどすべての個体で幼生は死亡することが報告されていることから、リュウキュウスガモ抽出物に含まれる毒性物質が濃度の違いにより異なる活性を示すか確認する。 また、リュウキュウスガモ抽出物に含まれる毒性物質が他の付着生物幼生についてどのような影響を与えるのか評価する。最初に用いる付着生物幼生は腸性ホヤ目の Phallusia nigra を用いる。卵巣精巣が消化管ループの中にできる腸性ホヤ目では輸卵管輸精管内ある卵精子は受精可能であり、解剖し輸卵管、輸精管から卵精子を採り人工授精に使用することができる。またこのホヤは宜野湾港の浅橋で1年中採集することが出来る。リュウキュウスガモ抽出物が、人工授精した P. nigra の幼生に対してどのような影響を与えるか評価することで、リュウキュウスガモ抽出物の付着性幼生に対する作用について新しい知見が得られると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究を遂行するためには、リュウキュウスガモと成体サンゴの採集、また瀬底研究施設を使用する必要があるので国内旅費を計上した。また、次年度は石垣島でもリュウキュウスガモの定期的な採集を検討していることから、本年度の研究費の一部を次年度に繰り越した。リュウキュウスガモ抽出物にはエダコモンサンゴ幼生に対する毒性物質が含まれることが明らかになっており、幼生に対する致死活性を指標として活性物質を探索する。活性を確認した画分については、各種クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを用いて分離・精製を行うが、その際クロマト用担体および充填剤、有機溶媒を必要とする。活性物質の構造解析はNMR,MSなどを用いて決定する。構造決定の際は特にNMRが不可欠であるが、サンプル量が微量であることが予想されるため高純度の重水素化溶媒が必要である。また幼生に対する毒性物質につては細胞毒性試験も検討する予定であり、その際マイクロプレートリーダーが必要なので今年度導入する。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Harmine promotes osteoblast differentiation through bone morphogenetic protein signaling2011
Author(s)
Yonezawa, T.; Lee, J-W.; Hibino, A.; Asai, M.; Hojo, H.; Cha, B-Y.; Teruya, T.; Nagai, K.; Chung, U-l; Yagasaki, K.; Woo, Je-Tae.
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Journal Title
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume: 409
Pages: 260-265
Peer Reviewed
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[Journal Article] N,N'-diphenethylurea isolated from Okinawan ascidian Didemnum molle enhances adipocyte differentiation in 3T3-L1 cells2011
Author(s)
Choi, S-S.; Cha, B-Y.; Kagami, I.; Lee, Y-S.; Sasaki, H.; Suenaga, K.; Teruya, T.; Yonezawa, T.; Nagai, K.; Woo, J-T.
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Journal Title
Journal of Antibiotics
Volume: 64
Pages: 277-280
Peer Reviewed
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[Journal Article] Artepillin C, as a PPARγ ligand, enhances adipocyte differentiation and glucose uptake in 3T3-L1 cells2011
Author(s)
Choi, S-S.; Cha, B-Y.; Iida, K.; Lee, Y-S.; Yonezawa, T.; Teruya, T.; Nagai, K.; Woo, J-T.
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Journal Title
Biochemical Pharmacology
Volume: 81
Pages: 925-933
Peer Reviewed
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[Journal Article] Harmine, a β-carboline alkaloid, inhibits osteoclast differentiation and bone resorption in vitro and in vivo2011
Author(s)
Yonezawa, T.; Hasegawa, S.; Asai, M.; Ninomiya, T.; Sasaki, T.; Cha, B-Y.; Teruya, T.; Ozawa, H.; Yagasaki, K.; Nagai, K.; Woo, J.-T.
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Journal Title
European Journal of Pharmacology
Volume: 650
Pages: 511-518
Peer Reviewed
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