2011 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子マーカーを利用した石灰紅藻サンゴモの生育特性の解明
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23710284
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 亜記 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (00452962)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 紅藻サンゴモ類 / 炭酸脱水素酵素 / 海洋酸性化 |
Research Abstract |
紅藻サンゴモ類は,体に炭酸カルシウムを硬く沈着する,サンゴ礁域では主要な造礁生物の1つであるが,近年の地球環境変動の影響による衰退が懸念されている。サンゴモ類の成長には,光合成と石灰化の共役が推定されているため,本研究では,サンゴモ類の光合成や石灰化に関与する遺伝子の同定と,水温,光量,pHのストレスを与えた際の遺伝子の発現解析を行い,光合成や石灰化に影響を与える環境因子を推定することを目的としている。 これまでに,サンゴ礁域でよく見られるサンゴモ類のうち,明瞭な直立体をもつ有節サンゴモとおもに殻状の無節サンゴモ数種を候補種としてサンプリングし,種同定を行い,水槽実験サンプルとして適当か検討した。その結果,有節サンゴモとして,ハネヒメシコロを,無節サンゴモとしては,ミナミイシモとサモアイシゴロモを利用することにした。さらに,水槽実験用に,これらの種を野外からサンプリングし,有節サンゴモについては細分化せず塊状で,無節サンゴモ2種については,各1個体から1cm角程度のチップ状サンプルを60個作成した上で,琉球大学瀬底研究施設で養生させている。 また,ミナミイシモとサモアイシゴロモの炭酸脱水素酵素の遺伝子を決定するため,両種から5’RACE法と3’RACE法のためのcDNA合成を行った。そして,唯一既報告の紅藻アマノリ類の炭酸脱水素酵素のプライマーと,新たに作成した同遺伝子のプライマーの2セットを利用して,3’RACE用のcDNAをもとにPCRを行い,クローニングを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の採択初年度に,申請時に所属していた琉球大学から広島大学に就職したため,とくに遺伝子実験に関わる研究機器の利用や研究協力体制などの確立に時間がかかり,研究遂行に遅れが生じた。現在では,遺伝子実験については,現在所属の部局内で共同研究者を得て,その協力の下での研究が可能になっている。 機能遺伝子を同定予定のミナミイシモ,サモアイシゴロモ,ハネヒメシコロを対象にした水槽実験を2年目に行うため,初年度に野外から藻体をサンプリングして実験用サンプルを作成した。現在は,琉球大学瀬底研究施設において養生させており,水槽実験の準備はできている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.無節サンゴモのミナミイシモとサモアイシゴロモについて,cDNAを新たに作成し直し,前年度に利用したプライマーを使って,5’RACE法と3’RACE法を行い,遺伝子の全長配列を決定する。両方のRACE法については,市販のキットを用いる。また,有節サンゴモのハネヒメシコロについても,同様に行う。2.決定した全長配列をもとにBlast検索ならびに分子系統解析を行い,系統樹を参考に遺伝子の同定と機能推定を行う。3.機能遺伝子を同定予定のミナミイシモ,サモアイシゴロモ,ハネヒメシコロを対象に水温,光量,pHを精密に制御した水槽実験を行う。前年度に作成し,養生させているサンプルを,光量(約40-60マイクロmol photons m-2 s-1)と水温(27度)一定で,pH3段階(8.2, 8.0, 7.6)の各ストレスに1ヶ月暴露する処理を行う。各条件下におけるサンプルの成長量や光合成活性量,電子顕微鏡観察による表層細胞の形態を測定する。4.実験終了後,サンプルを固定し,RNAの抽出とcDNAの作成を行う。そして,決定した炭酸脱水素酵素の配列をもとに,新たに設計したプライマーを使ってリアルタイムPCRによる発現解析を行い,発現量の変化を調べる。そして,得られた結果を学会発表・論文等で公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度より繰り越し分については,計画通り進まなかった1)PCR産物のクローニングと,2)沖縄での水槽実験を遂行するための旅費に充てる予定である。また,今年度の予算については,おもに1)水槽実験に関する容器,電池等の消耗品,2)遺伝子の同定とリアルタイムPCR用の試薬類,3)学会への参加旅費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)