2012 Fiscal Year Research-status Report
日本在来ナマズ属の地域集団と保全対象水域の特定および遺伝的モニタリングの実践
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23710288
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
松崎 慎一郎 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (40548773)
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Keywords | ナマズ / 国内移入 / 系統地理 / 地域固有性 / 遺伝的モニタリング / 地域集団 / ミトコンドリアDNA |
Research Abstract |
淡水魚類は、移動・分散が淡水に限られることから、地域集団に分化している。そのため、DNA分析によって進化的に重要な単位(ESU)を特定し、地域固有の系統を保全する必要がある。 これまでに日本の多くの淡水魚について、系統地理情報が収集・蓄積されつつある。しかし、ナマズ属については、水産有用魚種でありレッドリスト種を含む保全上重要なグループでもあるにもかかわらず、遺伝的な情報が皆無の状況である。 日本に生息するナマズ属3種(ナマズSilurus asotus、イワトコナマズSilurus lithophilus、ビワコオオナマズSilurus biwaensis)について、地域集団および保全単位を明らかにするため、日本全国(養殖場を含む)、中国、韓国、ベトナムの河川や湖沼からナマズ類を採集し、すべての個体について、ミトコンドリアDNA の調節領域の部分塩基配列を決定した。さらに、一部の個体について、ミトコンドリアDNAのCytochrome b領域、COI領域、ND4領域の部分塩基配列および核DNAのロドプシン遺伝子の部分塩基配列を決定した。 系統解析の結果、琵琶湖固有種であるイワトコナマズ、ビワコオオナマズは非常に古い系統であることが確認された。また系統地理解析の結果、日本に生息するナマズには、独自の進化史をもった地域集団が複数存在することが明らかとなった。 またナマズについては、国外移入は検出されなかったものの、国内移入はかなり頻繁におこっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な研究者と連携・共同することで、日本全国および主要なアジア諸国からナマズの試料を得ることができた。また複数のミトコンドリアDNAおよび核DNAの分子遺伝マーカーを開発・適用した結果、ナマズ属の系統関係に加えて、国内の地域集団を明確に判別できるようになった。これにより、国内移入の検出が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
地域集団が明確になったことから、放流などによる国内移入の頻度を定量的に把握することを目標とする。また遺伝的モニタリングの実践に向けて、遺伝的多様性を評価するマイクロサテライトマーカーを開発する。開発に際しては、次世代シーケンサーを用いて実験を行うことを検討している。次世代シーケンサーを適用することで、迅速に、数多くのマイクロサテライトマーカーの候補を探索できる可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで同様、主に遺伝子解析の消耗品にあてる。また、大量に収集した試料を整理し、適切に保管するために、冷凍庫を1台購入する予定である。
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Research Products
(5 results)