2011 Fiscal Year Research-status Report
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23710290
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
蓮井 誠一郎 茨城大学, 人文学部, 准教授 (00361288)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / ラオス / 不発弾 / 第二次インドシナ戦争 / ベトナム戦争 / クラスター爆弾 / 地雷 |
Research Abstract |
11年度は、サバティカルを利用した研究の急速な立ち上げをめざした。サバティカルの取得に成功し、ラオスへの訪問も2度、8月と11月に行うことができた。 8月には、UXOLao関係者へのラオス中北部ルアンパバーンでの聞き取りや、現地資料調査、被害関係者への聞き取りに成功し、今後の中北部での研究進展のための足がかりをつかむことができた。 11月の訪問では、ラオス中部から南部を中心にした調査となった。前回から予定していた関係者への聞き取り、およびJICA現地事務所での聞き取りに成功し、貴重な証言やアドバイスを数多く収集することができた。また、ラオス国立大学(NUOL)の専門家ともコンタクトをとりながら、情報収集にあたった。 なかでも、ラオス気象局副所長に面会し、ラオスの主要都市についての10年分の気温、降水量などの基礎的な気象データを得ることができたのは、大きな成果であった。これらのデータを用いて、気候変動が、いかにしてラオス南部での洪水を引き起こし、それが不発弾の移動につながっているかというメカニズムの解明につながる。というのは、近年北部と南部で多発する洪水により、地表に露出したり比較的浅い地中に埋まっていたりした不発弾が流れによって移動し、すでに調査が完了して「クリア」されたはずの場所での不発弾発見の一因を構成していると考えられているためである。これまでは、それらの再発見は、当初の除去作業の不調あるいは取りこぼしと現地ではとらえられてきたが、洪水に洗われた地域では、それ以外にも、上流部から運ばれてきた不発弾という側面があることが判明した。「本来は動くはずのない不発弾の拡散」という事態の発見と、その対処方法の模索は、重要な現地への貢献となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、準備旅行として、2011年3月14日よりラオス入りを計画していた。しかしながら、3月11日の東日本大震災により水戸市も大きく被災して交通網が寸断され、成田空港へのアクセスもできず、原発事故も発生してこのまま準備旅行を強行すれば、家族の安全を確保することもできないと判断し、やむなく中止となった。 この震災のため、全体の計画開始が半年近くずれ込むこととなってしまった。その後も、被災地の大学として、設備復旧により研究の開始に手間取った。さらに、地域の復興支援活動にも関わることが地元の国立大学として求められており、ラオスへの渡航は回数としては確保できたものの、準備旅行が中止となった影響をどうしてもうけてしまい、訪問期間をやや短縮せざるを得なくなった。 目標としていた予備論文の執筆完了も年度内には不可能となり、やや研究に遅れが見られる。ただデータの収集には成功しているので、これらを学生アルバイトなどをつかって整理し、予備論文の執筆を継続することで、今後の3年間で取り返していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
震災のため、遅れを余儀なくされた前年度を鑑みて、今年度は前半に授業担当を集中させ、年度後半には比較的ゆとりをもった業務計画を組むことができた。前期にできるだけ教育業務を完了させ、後期にラオスへの調査旅行を本格化させたい。これは、ラオスの雨期を避けて、屋外、とくに都市部ではなく地方での調査活動をより円滑にするためにも重要なことである。 前期は、エフォートについても、教育負担の増大で、作業量を確保しつつも相対的には低めになると想定される。そこで、学生アルバイトを積極活用し、収集したデータの整理と蓄積にあたらせ、後期からのスタートアップをスムーズにする計画である。 ラオスへの訪問回数も、当初予定よりも1回増やし、2回を何とか確保し、合計3週間~4週間弱の滞在を行い、遅れを取り戻していきたい。とくに、気候変動と不発弾の影響調査は、気候変動を軸に、他分野への展開やつながりも期待できるので、その点も意識しながら展開していく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記計画に則って、まずは夏休みから後期にかけてのラオスへの渡航旅費を確保すること、現地での通訳謝金を確保することが金額としては大きい割合を占めてくるため最重要課題となる。ラオスでは急速な経済発展で物価も高騰しており、とくに安全に長距離を移動できる自動車の借り上げはガソリン代の高騰、自動車への関税の高さなどによる自動車本体の価格高騰が影響している。また、同行する通訳への謝金が上昇傾向にある。日本人の訪問数が増大するに従って、優秀な通訳が奪い合いになることが原因と考えられる。しかし、これらの課題を解決しながら、続く余震をきにかけつつも、何としても2度の訪問を実現したい。これは、11年度前に予定していた準備旅行を実質的には11年度内に行わざるを得なくなったことへの対応策であり、研究の遅れの最大の原因に対応するための方策でもある。 一方で、前期には学生アルバイトをも使いながら、謝金を使用していく計画である。また文献資料についても、現地での収集が多くなるが、日本でも入手可能なものもあるので、アルバイトと連携しながら、体系的な資料整備を目指していく。これらの文献資料の裏付けを得ながら、ラオスの不発弾問題の経緯について、当初計画にて11年度内に計画していた予備論文の執筆を完了したいと考えている。
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Research Products
(1 results)