2012 Fiscal Year Research-status Report
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23710290
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
蓮井 誠一郎 茨城大学, 人文学部, 准教授 (00361288)
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Keywords | ラオス / 不発弾 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
12年度は、ラオスで夏に予定されていた調査を行い、UXOLaoでの不発弾についての調査を行い、とくにルアンパバーン県において、その観光産業(ラオスの主要産業のひとつ)にたいする影響や、地域の教育を含む社会生活、経済活動、農業への影響について調査した。結果として、近年の経済成長に伴い、外資が活発にラオス中北部にも浸透してきており、日本企業の進出も拡大しているが、不発弾がその大きな障害となっていることが明らかとなった。これは、これまで地元の住民だけの問題であった不発弾汚染が徐々に国際問題になりつつあることを示している。また、支援に入っている日本のNGO、JMAS(日本地雷処理を支援する会)との連携を更に強化しながら、ODAの初めての使い方である、ツムラ製薬の薬草畑の不発弾処理をJMASが請け負うという形の援助が始まったことが判明した。今後はその調査を開始したい。 ラオスからの展開として、同じ不発弾問題を抱える国内地域との比較を試みるべく、沖縄での調査を行った。米軍統治時代において、その被害は正確な記録がないために、さらなる調査が必要である。また、沖縄戦において、どの地区でどのような戦いがあり、それがどのような汚染につながっているか、歴史的観点からの調査も開始した。また、沖縄の不発弾は戦後になっても訓練地などで見つかるが、現在米軍から返還された射爆場跡地が茨城県にも存在し、当時から「誤射」「誤爆」による深刻な住民被害もあったことが明らかになった。また、県庁での聞き取り調査から、現在でも旧射爆場跡地では、大量の不発弾が港湾開発などに際して発見されていることも判明し、今後の研究課題とその広がりを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の東日本大震災で自宅も大学も被災し、そのためにサバティカルを利用した数回の海外調査による順調な研究の立ち上げに躓いたことが未だに影響している。被災した地域住民への地域貢献としての対応も必要だったために、これまではエフォートの確保とそれによる海外調査日程の調整と確保が難しかった。 13年度からは地域も徐々に落ち着きを取り戻しつつあるので、積極的な調査だけでなく、最終年度を見据えた成果発表についても、本格的に取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは遅れている海外調査を進展させたい。不発弾問題と気候変動問題が連動し、気候変動による突発的な豪雨と大洪水が、不発弾をも押し流してその分布を変え、一度処理した場所にも流れ込んでいるところがある。この問題は、気候変動が地域の人間の安全保障に及ぼす深刻な問題として、今後の戦後復興政策にも考慮されるべき問題である。ラオスの気象局と情報交換をすることを、計画に加えて研究の裾野を広げたい。 また沖縄や茨城といった、戦災を被った国内地域における不発弾問題を、共生の知という観点から、さらに掘り下げていく。これによって、ただラオス社会と日本の援助外交に対して貢献できる研究調査というだけでなく、日本社会と学術界へのより直接的な貢献をめざすものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費:ラオス1回20万円×1回(7~14日程度)、沖縄1回10万円×2回(合計10日程度)を中心に、調査旅行を行う。また茨城県内でも資料収集1回1万円×5回(合計5日)を継続する。 物品費:調査先での貴重な映像記録やデータとその編集、国内でのバックアップなど、調査の結果得られた情報を、万が一の災害などでも失わないような体制をつくっておく。 人件費:通訳謝金が最大だが、多くのデータの蓄積があるので、それを整理する学生アルバイトなどの人件費も確保していく。また、データ提供をラオスなどで依頼した場合の謝金も若干は確保しておく。
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Research Products
(1 results)