2011 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアのタケ類をモデルとした人文景観の形成に関する研究
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23710302
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大野 朋子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10420746)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 文化多様性 / タイ北部チェンマイ / 中国雲南省 / ラオス / 民族植物学 / 人文景観 |
Research Abstract |
地域の人文景観の構成要素である植物の多様性が、地域原産の植物、地域外から導入される有用植物、民族の移動に随伴する植物から成立することを、東南アジアのタケ類を事例として民族植物学的フィールド調査と地理計測学的解析によって実証するために23年度は、タイ北部、ラオス、中国雲南省の少数民族(モン族、リス族、カレン族、アカ族、ラフ族、ヤオ族など)が所有する伝統楽器の材料のタケおよび各民族の住環境で維持されているタケ類について、導入経路と栽培管理法、呼び名、利用方法、祭事や儀礼における使用法の聞き取り調査および、植物サンプルの収集を行った。また、景観構造の数量化を行うために、雲南省の複数の集落において個体識別できる叢生型のタケ類の配列について種を区別しながら調査しデータを取得しており、現在解析を進めている。得られたタケ類のサンプルの一部は、雲南省昆明植物園にある標本庫で種の同定を行い、文献調査も併せて行った。その結果、モン族の持つ伝統楽器ケーンのタケはSinobambusa intermediaでほぼ間違いないことが確認できた。さらにケーンの材料のタケは、標高が高く比較的涼しい場所にあるモン族の集落では栽培されていたが、標高の低い地域の集落では、栽培を確認できなかった。また、ケーンそのものあるいは材料となるタケは、ほとんどがラオスから持ち込まれていたことがわかった。 得られた結果を整理し、照葉樹林文化研究会(東京および大阪の2回)に参加して成果発表を行い情報交換するとともに、祭祀に関わるタケ製の装置について形の文化研究誌に論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タイ北部における民族植物学的フィールド調査では、モン族18箇所、リス族4箇所、ラフ族4箇所、アカ族3箇所の集落でそれぞれの民族が所有するタケ製の伝統楽器について情報および植物サンプルを収集することができ、特にケーンについては、18箇所中12箇所でSinobambusa intermediaの栽培を確認した。これら収集した情報の一部は解析を進めており概ね順調に研究を行っている。また、景観構造の数量化のためのデータは、雲南省で取得し、すでに解析を進めて論文を執筆中である。一方、必要なタケ類の種の同定については、雲南省昆明植物研究所や日本の国立科学博物館、京都大学総合博物館の所蔵する標本を用いて進めている。しかし、特に重要とされるタケ類に関しては、分子同定までには至っていない。23年度に得られた情報は、2回の照葉樹林文化研究会で発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に収集した生態および民族植物学的情報の精度の向上を行うために24年度では、 タイ北部(チェンマイ・チェンライ)、ラオス中央部(シェンクワン)、雲南省(南部)においてモン族(メオ族)の集落を中心に前年度と同様に民族植物学的フィールド調査をする。また、これまでの聞き取り調査から雲南省以外にも中国貴州省のメオ族もタケ製の笙を所有していることがわかり、必要に応じて貴州省への調査も行う予定である。景観構造の数量化に関しては、すでに論文として解析、執筆中であるため、必要があれば、捕捉データの収集も行う。また、タケ類の種の同定は、前年度に引き続き標本調査を行いながら、特に重要な種に対しては、タケの葉からDNAを抽出してシーケンス分析し、系統解析する。タケの遺伝的情報を用いながら分子同定し、同定精度を向上させる。得られた情報の根拠を残すために重要な種は線画と標本を作成する。関連学会での研究発表と論文の作成を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は、東日本大地震の影響により交付された研究費の配分が遅れたことから、研究費の一部を次年度に繰り越した。また、タケ類の分子同定を行うために、遠心分離機など機器の必要が生じ、24年度は、繰り越した予算の一部でこれらの機器の購入を行う。新たに追加される中国貴州省への現地調査によって生じた旅費等は、消耗品(衛星画像)の予算の一部、あるいはタイ、ラオス、雲南省への調査日数を変更し、予算を計上して使用する。25年度は計画通りである。
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Research Products
(3 results)