2011 Fiscal Year Research-status Report
中華圏における日本式消費文化のグローカル化―上海社会史研究および上海との比較研究
Project/Area Number |
23710303
|
Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
岩間 一弘 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (10364902)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 上海 / 香港 / 社会史 / 消費文化 / 都市観光 / 買物 / 飲食 |
Research Abstract |
(1)飲食について…2011年8月において、上海で現地調査を実施した。おもに上海大衆の食文化の変化に関する文献収集とヒアリングを行った。手始めに、1980年代末という早い時期に上海でパン・ケーキ屋を始めた日本人社長に貴重なインタビューをとることができ、さらに地元の一般家庭(留学生の祖父母)で、どのような時にどのようなパンやケーキを食べたのかを聞き、その上で上海図書館のデータベースで新聞記事などを検索して裏付けをとり、パン・ケーキ食が上海大衆に普及する歴史過程をたどることができた。ほかにも、2011年11月の上海調査でも、現地の外食業者のヒアリングをする機会を得た。 (2)買物について…(1)の過程で、欧米式・日本式の消費文化の普及は、クリスマス消費の普及と関連が深いことが浮き彫りになった。そのためクリスマスと関連する買い物について、1920~90年代に到る新聞・雑誌記事の収集・分析を始めた。2011年11月および2012年2月の現地調査ではその作業を継続しつつ、さらに2012年2月には、途中経過を中国語ペーパーにまとめて上海での国際シンポジウムにおいて口頭発表し、現地の専門家と意見交換を行えた。また、百貨店に関する文献収集も並行して実施した。 (3)都市観光について…(1)(2)の研究過程で、日本式消費文化の普及には、上海への日本人観光客の果たした役割が予想以上に大きいことがわかってきた。そのため、上海観光に関する日本の大衆雑誌・新聞記事や文学作品を網羅的に収集し、分析を始めている。それと並行しながら、できるだけ現場に赴いて、文献の視点の裏付け作業を行っている。また、2011年8月には上海に研修に来ていた慶應義塾大学文学部の学生たちに対して簡単なアンケートを実施することもできた。 (4)上海以外の地域について…(2)(3)について、香港および台北に関しても文献収集を行い、比較検討を始めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査で、パン屋および外食業者に貴重なインタビューを複数回実施できたことを契機として、順調に研究を始めることができた。その結果、千葉商科大学における講演で研究の一部成果を紹介できるまでに至ったのは当初の計画以上の進展である。飲食に関しては、今後もインタビューを継続できそうで、文献収集も順調であることから、一応の成果をまとめることができそうな見込みがある。 さらに買物についても、外食研究の過程でクリスマス消費という重要なテーマを発見し、研究途中でありながらも一応、学会発表までたどりつけた点は計画以上の進展である。ただし、当初かなり力を入れていた百貨店(特に日系百貨店)については、2011年度に立て続けに研究書が公刊されたことから、研究の方向性を調整する必要に迫られている。さらに日系流通業者に関しては、インタビューのめどがたたない。 都市観光については、今年度の研究実施過程でその重要性が浮き彫りになってきており、さらに現場観察や文献収集も順調に進められていることから、次年度ではもっと力を入れたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
飲食業に関しては、日本人業者のインタビュー調査と中国語・日本語文献の収集を継続する。 買物については、クリスマス消費に関する膨大な文献の収集・整理・分析を進めていく。それと同時に、百貨店の社会的役割の変化、および1990年代末以降の地下鉄の開通や大型ショッピングセンターの開発に伴う商圏・消費市場の変化を、文献検索や聞き取りによって明らかにしたい。 都市観光については、当初の計画よりも重点的に研究を進めたい。新たに上海の「観光都市化」ないしは「テーマパーク化」の過程、およびそれに日本人のビジネスや観光がどのように関わってきたのかを明らかにしようとし、さらに上海の変化を香港や東京と比較しつつ検証していく。 まず、1980年代から始まる上海の観光都市化と日本人観光客の「中国趣味」との関わりについては、今年度中に学会発表まで至りたい。さらに、外灘(バンド)、新天地・田子坊、1933老場坊などについては、それが観光地化していく歴史過程を明らかにしたい。くわえて、2015年のディズニーランドの開園に至る上海の遊楽場の歴史を調べたい。これらについては、アジアのディズニーランド都市である東京・香港と比較しながら検証をしたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
インタビュー調査および文献収集については、今のところ単独で行っているために、人件費の余りが生じた分については今年度に使用する。 今年度は、予想外の重責の委員長を勤務校にて担うことになり、海外調査のスケジュールの設定は困難が予想されるが、8月、12月、3月の3回の上海調査を計画しており、ほかに香港へ、もし日程的に可能ならば台北と北京へも行きたいと考えている。 3回の海外調査に伴って、関連する文献閲覧・複写費、人件費等が必要になると考えている。
|
Research Products
(5 results)