2013 Fiscal Year Annual Research Report
ラテン・キリスト教世界とイスラーム世界の法概念の比較哲学的・比較宗教学的考察
Project/Area Number |
23720008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 芳久 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50375599)
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Keywords | 哲学 / 倫理学 / 宗教学 / 比較哲学 / 一神教 / トマス・アクィナス / アヴェロエス / 法哲学 |
Research Abstract |
本研究は、ラテン・キリスト教世界とイスラーム世界における哲学的な知の在り方を比較思想的に考察するという、必要性が幅広く自覚されつつも未開拓な分野に、とりわけ法思想の比較哲学的考察という観点から取り組んだものである。 研究結果としては、ラテン・キリスト教世界に関しては、単著『トマス・アクィナスにおける人格(ペルソナ)の存在論』(知泉書館、2013年)を刊行したことが最大の成果である。同書の第四部「存在充足の原理としての自然法」においては、ラテン・キリスト教世界を代表する法理論家であるトマス・アクィナスの自然法論についての詳細な分析を遂行している。 イスラーム世界については、「イスラーム哲学:ラテン・キリスト教世界との交錯」(『西洋哲学史』第二巻、講談社選書メチエ、2011年)という論考を発表し、法思想を含めたイスラーム思想の全体をキリスト教思想に対する影響関係に着目しながら記述するという斬新な試みを実現した。 さらに、“Yahya ibn Adi on Faith and Reason”(Parole de l’Orient, 37, 2012)や「ヨーロッパとイスラーム : 文化の翻訳」(『西洋中世研究』第3号、2011年)においては、両世界の思想交流についての詳細な分析を行なった。 また、学会発表としては、ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所の第四回シンポジウム「中世地中海世界における翻訳と文化の伝承」(2013年9月)において、「トマス・アクィナス『対異教徒大全』の意図と構造」と題した提題を行ない、イスラーム世界における知の伝統をトマスがどのような仕方で受容したのかということを明らかにした。 三年間の研究期間を通じて、単著・学会誌・商業誌など、様々な媒体にキリスト教思想とイスラーム思想の接点に関わる論考を発表し、充実した研究成果をあげることができた。
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Research Products
(11 results)