2011 Fiscal Year Research-status Report
HIV感染症を主とするpublic healthの政治哲学的枠組みの分析
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23720011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大北 全俊 大阪大学, 文学研究科, 助教 (70437325)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 政治哲学・思想 / public health / HIV/AIDS |
Research Abstract |
平成23年度は当初の計画通り、文献研究及びHIV感染症を主とするpublic healthの諸事象の調査を遂行した。調査については、インターネット上での調査をはじめ、国際及び国内の学会への参加、そして市民活動団体への接触などによって遂行した。それらの途中経過は、学会発表のほか二つの紀要論文の形でまとめた。文献研究では、public healthに限定されない、政治思想・政治哲学上の議論を参照することで、public healthがどのようなはたらきを社会の中でしているのか、またその問題点は何かということを俯瞰する視座を得ることにつながった。またロールズをはじめとする英米系の政治哲学のみならず、アレントやフーコーなどの政治思想を参照することで、政治哲学・思想自体の理解もより多角的な視点から得ることができた。なかでもフーコーの医療及び公衆衛生を主とする思索は、現在の事象を読み解く上で、特にpublic healthが社会でどのような機能を果たしているのかということを理解するうえで重要な視座を提供しているものと認識し、その研究に力を入れた。また、理論的な研究だけではなく、現実の諸事象を調査することによって、理論研究の方向性をより正確なものにすると同時に、それらの諸事象の持つ意味を検討し、より事象に即した研究を遂行することを可能とした。以前より、public healthのみならず医療の諸事象についてその倫理学的・哲学的な議論を深めるためには政治哲学・思想を参照する必要性が主張されている。本研究は、改めてpublic healthおよび医療の倫理学的・哲学的議論の進展に寄与するだけでなく、public healthおよび医療そのものの政治哲学的な枠組みを分析することで、よりラディカルな批判を可能とする視座を得ることに寄与するものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
public healthの政治哲学的な枠組みを分析し、その枠組みを明確にするという研究目的を達成するにあたり、まずその理論的な考察はおおむね順調に遂行できているものと考える。いまだ多くの政治哲学・思想上の議論を渉猟しきれてはいないが、特にフーコーによる医療及びpublic healthに関する記述を研究することによって、public healthの社会における機能、あるいは、public healthがどのような社会・政治の動向に関与しまた寄与しているのかということの概観を得つつあることによって、本研究の主な見通しが得られたものと考えている。また、HIV感染症を主として、現在起きている諸事象のうち、特に重要と思われる事象(HIV感染症についてはtreatment as preventionなどの動向)を析出できたことは、今後の事象の調査及び研究そのものの遂行にあたって、より確かな方向性を得られたものと考える。理論及び事象研究、いずれもまだ十分とは決して言えないが、今後研究を遂行するにあたり、ある程度方向性を定めることができたことは、23年度の研究達成度として、おおむね順調と判断してよいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度も継続して文献研究を遂行するが、なかでもフーコーの政治思想、医療及びpublic healthに関係する記述について研究を遂行する。フーコーの研究のなかでも、比較的晩年の研究とされる「統治」に関する記述は、public healthの政治哲学的枠組みを分析するにあたり非常に示唆に富むものと考えている。さらに、関係する政治哲学・思想、public health ethicsなどの文献研究を遂行する。また、24年度は、public healthの研究を遂行するにあたり必要と考えられる経済学、疫学、社会福祉学、歴史学などの関連領域の研究も遂行する。ただし、これらの領域の研究を遂行するにあたっては、当該領域を専門とする研究者へのインタビューや研究会の開催などによって、効率的に研究を遂行する予定である。また、文献研究と並行して、HIV/AIDSを主とするpublic healthの諸事象の調査に力を入れたいと考えている。インターネットを使用することにより、その多くの事象を調査できるものと考えているが、その背景となる事情などより詳細について知るためには、関係者や関係機関の調査も必要なものと考えている。そのため、関係者へのインタビューや関係機関への調査など、研究の進捗状況をかんがみて可能な範囲で遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度も文献研究を継続する関係から、書籍の購入や雑誌の購読に研究費を使用する。また、経済学や疫学、社会福祉学、歴史学などの関連領域の研究者へのインタビューや彼らとの研究会の開催を予定しているため、研究協力者への謝金や旅費、研究会会場の整備にあたる経費を予定している。また、関連する学会に調査及び発表の目的で参加するため、その旅費を予定している。なかでも、24年度は、アメリカのワシントンDCにて「第19回国際エイズ会議」が開催されるため、その海外渡航に必要な経費を予定している。さらに、研究の進捗状況によって、可能であれば、国内外の関係機関(アメリカのCDCなど)の調査を検討しているため、その渡航費や協力者への謝金も予定している。そして、インタビューおよび研究会の記録の作成、また研究の進捗状況に応じて可能であれば海外のジャーナルへの論文の投稿を検討しているため、それらにかかる謝金などの経費を予定している。
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Research Products
(6 results)