2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720015
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻木 新 芝浦工業大学, デザイン工学部, 准教授 (90582198)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本語の記憶表現 / 英語の記憶表現 / 日常的な記憶概念 |
Research Abstract |
(1) 「覚えている」と「思い出す」の用法に注目し、"remember"の様々な用法との比較を行った。とりわけ"remember"が動名詞を目的に取る場合に注目し、この表現が日本語の記憶表現で明確に表現できるかどうかを検討した。"Remember"が動名詞を目的に取るような表現は日本語では通常、助詞「こと」や「の」を使って表現される。たとえば"X remembers crying last night"は日本語では「Xは昨夜泣いたことを覚えている(思い出す)」と表現できるとされている。しかし、同様の表現は"remember"がthat節を目的に取る場合の表現にも用いることができ、したがってrememberの異なる2つの用法を明確に区別できるとは言えない。しかし、その他に考えられる「覚えている」と「思い出す」の用法に訴えたとしても、"remember"が動名詞を目的に取る用法のみを明確に表現する事はできず、ゆえに、これら日本語の記憶表現の用法ではこの"remember"の用法を正確に表現できないという結論が得られた。これらの"remember"の用法が異なる記憶概念を表現している、という説は広く受け入れられているから、英語には「覚えている」や「思い出す」という表現を用いるだけでは明確に表現できない種類の記憶概念が存在することが明らかになった。(2)"Remember"と"know"の間の含意関係に対する反例が、なぜ明確に提示できないのかを示すための議論の詳細を検討した。また同様の議論が「覚えている」と「知っている」の間にも成立しうるかを考察した。これら成果は、記憶表現に関する日本語と英語の違いを明らかにしただけでなく、記憶概念の分析という関しても重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)当面の成果を国内学会で報告するなど、国内のほかの哲学研究者との議論を通じ、日本語の記憶表現についての様々な示唆を得ることができた。この結果を踏まえ春に渡米した折に英語話者である多くの哲学研究者から英語の記憶表現や知覚表現などに関する直観を確認し、自身の議論についての示唆を得ることができた。これらの成果をもとにさらなる学会発表へ向けた準備を開始した。(2)"Remember"と"know"の間の含意関係についての論文を完成し、雑誌に投稿した(5月現在査読中)。(3)予定していた電子ジャーナルの購入は見送ったが、実質的な問題は特になかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、日本語と英語の記憶表現の比較についての検討をさらに深める。またこれまでの研究の過程で、日本語と英語以外の言語に関する記憶表現の検討や、コーパスを利用した日本語・英語の記憶表現の検討といった、当初の想定に含まれていなかった課題が見つかったが、今後はこれらの課題についても積極的に取り組んでゆく。また現時点での成果を学会などに発表し、そこで得られたフィードバックをさらに研究に取り込んでゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた電子ジャーナルの購読を予算上の理由から見送った結果、次年度への繰り越しが発生したが、その分の予算は、新たに見つかった課題に取り組むための書籍購入や利用料などに振り分ける。また、国外だけでなく国内学会へも積極的に参加し、発表を行う。
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Research Products
(1 results)