2011 Fiscal Year Research-status Report
ポスト革命期フランスにおける宗教と社会統合-プルードンを事例として-
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23720037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金山 準 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (30537072)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 思想史 / フランス |
Research Abstract |
本研究の目的は、ポスト革命期フランスの宗教と社会の関係について、プルードンの思想を中心として検討することにある。今年度は、同時代の思想潮流との関連に留意しつつ、宗教論を中心にプルードンの思想を検討すること、ならびにプルードンに関する先行研究のサーヴェイが課題であった。以上の目的に照らし、本年度は日本およびフランスにて関連資料の収集・分析にあたり、その過程で得られた現在までの成果を別記のとおり論文として発表した。それらは彼の宗教思想の概要を示すと同時に、その宗教論と彼の社会思想全体との関係に留意しつつ論じたものである。プルードンの宗教論に焦点を当てた研究はとくに邦語では少ないが、彼の思想形成の背景にはカトリック思想が根深いかたちで存在しており、宗教への着目によって「アナルシー」としての彼の秩序構想に接近することができると考えられる。とくに本研究が着目した重要な文脈は、同時代の(宗教的)社会主義者との関係である。本研究では、多かれ少なかれキリスト教的な宗教の復興を社会統合の再建に結び付ける同時代の社会主義者との相違を際立たせ、むしろ彼の「正義」論が宗教と拮抗するものであることを示した。これはプルードンの思想史的意義を明らかにするものであるとともに、彼を事例とすることで、19世紀フランス思想史を貫くトピックである宗教と社会の関係について再考する手がかりにもなると考えられる。とくに彼は宗教に対してかなり近い立場から出発しながら、教権主義批判、カトリック批判、そして神への批判と宗教批判を徹底させていく。このような経緯のゆえに、彼の思想はポスト革命期のフランスにおける宗教と社会の関係について検討するうえで重要な試金石となっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プルードンの思想そのものについてはすでに複数の成果を発表し、当初の計画以上に進展したといえるが、同時代の宗教思想との関連については扱うべき資料が多く、まとまった成果を出すためにさらなる時間が必要となる。その点では当初の計画に比してやや時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の計画通り、第二年度は前年度に収集した資料の分析を行い、研究の進展に応じて新たに必要となった資料を収集する。これらと並行して、中間的なまとめとしての成果報告を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き、資料の収集に研究費があてられる(なお前年度はとくに物品費について経費を節減することができたため、それによって生じた余剰分を次年度の図書資料費を中心とする物品費に割り当てる)。それと併せて研究調査や成果報告のために国内での渡航を予定している。
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Research Products
(3 results)