2011 Fiscal Year Research-status Report
ポストメディアの美学――感性論的メディア論の再構築に向けた基礎的研究
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23720060
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
門林 岳史 関西大学, 文学部, 准教授 (60396835)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | マクルーハン / 東日本大震災 / ドキュメンタリー / ポストメディア / 映像 / 感性論 / メディア論 |
Research Abstract |
2011年は、本研究にとって重要な位置づけにある思想家マーシャル・マクルーハンの生誕百周年にあたり、世界各地でそれを記念する国際的な学会やシンポジウムなどが開催された。私自身、バルセロナで開催された「McLuhan Galaxy Barcelona 2011」およびベルリンで開催された「Re-touching McLuhan」のふたつの国際会議に参加し、参加した研究者との交流を通してマクルーハン研究の最新の動向について知見を得た。とりわけ、マクルーハンの理論を感性論の観点から再検討する研究が盛んになっている状況に触れられたのは、「ポストメディア」という概念に基づいて感性論的メディア論を構想する本研究にとっては大きな成果である。 また、本年度は山形国際ドキュメンタリー映画祭2011にも参加し、東日本大震災関連のドキュメンタリー作品を中心に、多くの映像作品について調査を進めた。映像というメディアの性質について理論的に再考するにあたっても、東日本大震災以降のメディアの状況についてのアクチュアルな視点を持つことは有益であり、本年度はどう時代的な状況と理論的な研究の間を架橋することにも大きな力を注いだ。 当初より予定していたメディアアート、ヴィデオアート関連の調査についても、恵比寿映像祭に参加するなど進展を遂げた。また、初期の実験映像やヴィデオアートについての映像資料も入手し、本研究にとって欠かせない資料体の構築を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、カールスルーエのメディア芸術センターやリンツのアルス・エレクトロニカなど、メディアアートの重要な拠点を訪れ、調査することを予定していたが、予定を変更しマクルーハンについてのふたつの国際会議に出席した。結果として、メディアアート関連の調査は予定通りに進まなかったものの、本研究にとって重要な理論的動向に接することが出来、その点では予定以上の進展を遂げたと言える。 また、東日本大震災関連のドキュメンタリー映画作品の調査を通じて、本研究の理論的視座を同時代的な状況に架橋することも出来、これも予定していた研究計画にはなかったことではあるが、むしろ積極的に本研究の視座を広げることが可能になったと捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度より予定していたものの十分に実施できなかったメディアアート関連の国際的な研究動向の調査については、次年度以降より重点的に進めていきたい。それとともに、今年度の成果であるマクルーハン以降のメディア論を完成論的なメディア論として再構築する作業、および、ドキュメンタリー映像をめぐるメディア論的な視座を、より有機的に「ポストメディア」の理論に統合していく作業を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
9月末にミシガン大学で開催される国際会議「Permanent Seminar on the Histories of Film Theories」に参加し、日本のメディア論について発表する。また、9月初頭にオーストリアで毎年開催されているメディアアートについての国際的な祭典アルス・エレクトロニカにも参加する予定である。 それ以外にも実験映像、ビデオアート関連の映像資料の調査を引き続き継続する。
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Research Products
(6 results)