2011 Fiscal Year Research-status Report
仏師運慶作品の成立と受容―霊験仏信仰との関わりから―
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23720064
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Research Institution | Kanagawa prefectural Kanazawa bunko museum |
Principal Investigator |
■谷 貴之 神奈川県立金沢文庫, その他部局等, 研究員 (50443411)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 運慶 / 霊験仏 / 大日如来 / 大威徳明王 / 愛染明王 / 像内納入品 |
Research Abstract |
本年度は、以下の研究を行った。(1)運慶と東寺講堂諸尊像の修理について―運慶が地位と名声を確立したのは、建久八年(1197)の京都・東寺(教王護国寺)の講堂諸尊像の修理が極めて大きかったことを指摘するため、神奈川県立金沢文庫が保管する称名寺聖教のうち『東寺講堂御仏所被籠御舎利員数』『東寺講堂御仏御舎利員数』などについて、詳しく調査・写真撮影などを行った。(2)運慶作品と東寺講堂諸尊像について―神奈川県立金沢文庫では平成22年度に特別展『運慶―中世密教と鎌倉幕府―』を行った。展示された奈良・円成寺所蔵大日如来坐像や、東京・真如苑所蔵大日如来坐像、栃木・光得寺所蔵厨子入大日如来坐像は、東寺講堂主尊の大日如来像を強く意識して運慶が製作したものであるとされる。そこで、特別展の際に調査を行い収集したデータ(写真等)について、整理・検討を行って、運慶作品と東寺講堂諸尊像の関係が深いことを再確認した。(3)称名寺光明院大威徳明王像と愛染明王像について―称名寺光明院の大威徳明王像(神奈川県立金沢文庫保管)は、その銘文により建保四年(1216)に、大日如来・愛染明王・大威徳明王の三尊の一つとして発願されたことが明らかである。このうち愛染明王像については関連作品が少ない。そこで鎌倉中期に活躍した仏師善円が製作した、西大寺愛染堂の本尊像が、その後、霊験仏として信仰されるのに着目し、その関連作品を調査した。そして先行しただろう運慶の愛染明王像との関係について検討を行った。(4)像内納入品について―仏師運慶は造仏において、仏舎利を中心に像内納入品の作法を確立したとされる。平成23年度に神奈川県立金沢文庫では『仏像からのメッセージ―像内納入品の世界―』を行ったが、そこでは平安時代末期から鎌倉時代を中心とする像内納入品を多数集めた。そこで仏舎利安置の方法を中心に調査を行い、運慶作品との比較検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回採択された、科学研究費により研究を行ったデータ(写真等)を、継続して最大限に活用することが出来た。また今回採択された研究テーマに関連する調査や、それに関連する出張なども、おおむね順調に実行することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究目的に添った研究を続けて行いたいと思うが、次年度以降については、途中経過報告も兼ねて、学会発表や論文・調査報告書類の執筆なども視野に入れたい。なおすでに、平成24年度には研究テーマに基づいて学会発表を行うことになっている(発表採択の内示あり)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続いて、関連作品や資料などの調査データ収集のため、出張調査や写真撮影を中心に行いたい。
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Research Products
(2 results)