2012 Fiscal Year Research-status Report
仏師運慶作品の成立と受容―霊験仏信仰との関わりから―
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23720064
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Research Institution | Kanagawa prefectural Kanazawa bunko museum |
Principal Investigator |
瀬谷 貴之 神奈川県立金沢文庫, その他部局等, 研究員 (50443411)
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Keywords | 運慶 / 貞慶 / 興福寺 / 興福寺北円堂 / 大倉薬師堂 / 十二神将像 / 仏法紹隆寺 |
Research Abstract |
本年度は、主に以下の研究を行なった。(1)仏師運慶と解脱上人貞慶との関係について―解脱上人貞慶(1155~1213)は、鎌倉時代初期に南都復興に活躍した僧侶で、殊に興福寺の復興については、その出身寺院であることから積極的に関わった。運慶が一門を挙げて復興造像を行なった興福寺北円堂の造営(1207~1212)にも、貞慶は深く関与したとされる。このことについて『讃仏乗抄』や『弥勒如来感応抄』などの関連史料を検討し、北円堂全体の構想と造形に、貞慶の弥勒信仰と舎利信仰を融合させた思想が反映されている可能性を指摘した。その結果、現在、興福寺南円堂に安置される四天王像が、本来の運慶一門による北円堂安置像である蓋然性が濃いことを導き出した。(2)運慶と大倉薬師堂の造像について―大倉薬師堂は『吾妻鏡』によれば、建保六年(1218)七月に北条義時が鎌倉・大倉郷に建立、同年十二月には仏師「雲慶」の作になる薬師如来像を安置して供養された。この薬師如来に付属していた十二神将像(戌神)が、北条義時を源実朝暗殺の厄難に巻き込まれるのを救ったという説話が流布することにより、鎌倉国宝館像(旧鎌倉辻薬師堂)や奈良国立博物館像(旧横浜太寧寺像)など、一連の運慶作品の模刻像が製作されたことを、研究代表者は明らかにしてきた。さらに本年度は、この大倉薬師堂様十二神将像の作例である、横浜・宝生寺の厨子入薬師三尊・十二神将・四天王像を集中的に調査することにより、それが鶴岡八幡宮に明治維新まで伝来した、同社の霊宝である可能性が高いことを明らかにすることが出来た(3)仏法紹隆寺不動明王立像について―長野県諏訪市の仏法紹隆寺に伝来する不動明王立像は、顕著な運慶様式を示す作品として注目されている。本像について調査・写真撮影、及びX線透過写真撮影を行なった。その成果の検討については、本事業の最終年度である次年度に行ないたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回採択された科学研究費による研究成果や、昨年度の研究により得られた調査データを、継続して本年度も活用することが出来た。また、所属機関の調査研究業務と、本事業の研究課題の実施を、最大限に関係付けて行なうことも出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究目的に副った研究を、作品調査などを中心に行ないたいと思う。また本年度は中間報告として、学会発表や論文発表を行なった。次年度は最終年度のため、引き続き最終報告としての学会発表や論文発表に勤めたいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度調査研究を行なった作品や資料に関連するものも含め、引き続き調査研究データ収集のため、出張調査や写真撮影などを中心に行ない、その結果を検討して新たな研究成果を導きたい。
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Research Products
(2 results)