2013 Fiscal Year Annual Research Report
仏師運慶作品の成立と受容―霊験仏信仰との関わりから―
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23720064
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Research Institution | Kanagawa prefectural Kanazawa bunko museum |
Principal Investigator |
瀬谷 貴之 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 主任学芸員 (50443411)
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Keywords | 運慶 / 東大寺 / 重源 / 弁暁 / 諏訪氏 / 不動明王 / 霊験仏 |
Research Abstract |
本年度は従前からの研究内容に加え、以下の研究を行った。 (1)国宝・重源上人坐像(東大寺所蔵)について―東大寺俊乗堂に安置される国宝・重源上人坐像は、我国の肖像彫刻史上、最高傑作の一つとして挙げられる。その像主である重源は、大勧進として平家による南都焼討後の東大寺再建を鎌倉時代初期に主導し、建永元年(1206)に没した。本像はその没後間もなく、慶派仏師、近年では運慶が造像した可能性が定説化してきている。このことについて本研究では、金沢文庫や東大寺で保管する、鎌倉時代初期に東大別当を務め、重源と密接な関係であった弁暁(~1202)の関連史料を再検討した。その結果、本像が重源没後ではなく、正治二年(1200)前後に八十賀のために寿像として、東大寺別当であった弁暁により、運慶を仏師として製作された可能性が高いことを導き出した。 (2)不動明王立像(仏法紹隆寺所蔵)について―昨年度より引き続き、顕著な運慶様式を示し、一説には運慶による製作の可能性が指摘される長野県諏訪市の仏法紹隆寺の不動明王立像について検討した。エックス線写真撮影の結果は、従前指摘されていた月輪形銘札では無いことが判明したが、その詳細については継続して検討中である。また諏訪氏関連の史料を検討することにより、同像が12世紀末の諏訪氏と源頼朝との関係ではなく、13世紀初頭の諏訪氏と北条得宗家との関係から、すでに鎌倉幕府関連の造像で存在した不動明王像などを参考に、製作された可能性もあることを導きだした。 以上の検討結果などを中心に、関連の作品調査や写真撮影を本年度も継続して行うことが出来た。また、一部の研究結果については、展覧会図録や講演会などで、その成果を発表した。
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Research Products
(3 results)