2011 Fiscal Year Research-status Report
草月アートセンターの網羅的な資料体編成に向けた「アーカイヴ型」研究
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23720079
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上崎 千 慶應義塾大学, アート・センター, 講師 (50599462)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 芸術諸学 |
Research Abstract |
草月アートセンターの網羅的な資料体編成のための手続きとして、平成23年度は当初の計画通り、以下の6工程を実施した。(1)物理的プロセス:草月会からの寄託アイテム群の調査・分析・分類を慶大アート・センターのアーカイヴ作業室にて行った。各種アイテムを催事単位でグループ化、必要に応じて保全処理を施し、アイテム群の大半を占める催事印刷物(計981点/平成24年4月現在/重複アイテムを除く)をクロノロジカルに配列、フォルダー(計17)に収めた。ポスター等大型印刷物(計91点)については簡易的な撮影を行い、慶大アート・センター保管庫内のマップケースに収めた。(2)全催事の一覧表及びアイテム総目録の作成:先行研究や二次資料を参照し、草月アートセンターで行われた計251件の催事(本研究が現時点で確認している全催事)の一覧表を作成した。またこの一覧表に準拠し、先述のアイテム群の総目録を作成した。(3)全アイテムの段階的なデジタル・イメージ化:催事印刷物を中心に、すでに過半数のアイテムについてこのプロセスが完了している。(4)資料の二次的収集(フィールド・ワーク):散逸資料の所在調査・収集・分析・分類・データ化(国内の美術館ほか各種研究機関のコレクション及び個人所蔵資料へのアクセス)、関係者への聞き取り調査を行い、新規入手した情報を催事一覧表に追加した。(5)草月会館内に残されているアイテム群の調査・分析・分類:書簡、記録写真、フィルム、音源等に関する調査と、催事一覧表との照合を行った。(6)データベースの設計・構築と全メタデータのアルファベット並記:個別的な情報の深度よりも網羅性を優先し、簡易情報、基本情報、詳細情報、追加情報の計4つのメタデータ階層を、段階的に充填している。アイテムの所在が確認されていない催事に関しても、二次資料等から可能な限りメタデータを採取している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
草月会からの寄託アイテム群について、データベースの設計・構築よりも資料体としての体裁を物理的に整えるプロセスを優先的に実施した結果、草月アートセンターで行われた各種催事に関心を持つ国内外の研究者(資料閲覧希望者)のアーカイヴとしての受け入れ態勢(本研究が編成に取り組む資料体への第三者からの物理的アクセス可能性)を早期に実現することができた。パフォーマンス、造形芸術、音楽、映画、アニメーション、詩、グラフィック・デザインなど、研究者たちの各々の関心はしばしば個別的であるが、本研究はアーカイヴを媒介とした研究者たちとの情報交換の機会に富み、彼らの各々の専門領域における知見の提供を受けることが可能な状態で進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究活動で得られた成果を軸に先述の(3)~(6)の各プロセスを継続し、さらに同時代の批評や受容に関してもアイテムあるいは情報を収集・分析・分類していく。(7)「アーカイヴ型」の研究における海外での事例を調査:Smithsonian Institution (Archives of American Art), MoMA Archives, Getty Research Institute ほかを訪問調査する。その他、米国に限らず、草月アートセンターと同時期の資料体を扱う各種研機関を訪問し、技術面での情報交換を可能な限り行う。(8)海外での調査の成果を本研究に反映させる。この時点で、必要に応じ分類方法・データベース設計・構築の手法に関する軌道修正を行う。(9)データベースを発信するためのインターフェース(ウェブ・サイト)の設計・構築。本研究が網羅性に重きをおく「アーカイヴ型」研究である以上、このインターフェイスは、残っている資料のみのメタデータではなく、「なにが残っていて、なにが失われているのか」というところまでのデータが示されなくてはならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アーカイヴ作業補助者の人件費・謝金、調査旅行(フィールドワーク)のための旅費、図書等リファレンス購入やアーカイヴ用品(中性紙ボックス、シートプロテクター等の消耗品)購入のための物品費に充てる。平成23年度の調査旅行の行き先を国内から海外(ニューヨーク近代美術館 MoMA Archives 訪問)に変更したため旅費が想定額を超過したものの、アーカイヴ作業補助者への人件費・謝金が想定額を下回った。そのために発生した残額67,810円については新年度に使用する。
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