2012 Fiscal Year Research-status Report
草月アートセンターの網羅的な資料体編成に向けた「アーカイヴ型」研究
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23720079
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上崎 千 慶應義塾大学, アート・センター, 講師 (50599462)
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Keywords | 芸術諸学 / 文化資源 |
Research Abstract |
引き続き各種アイテムのデジタル化、関連資料の二次的収集(フィールド・ワーク)、草月会館に残されたアイテム群(主に書簡と写真)の調査、データベースの設計・構築など、複数の資料体編成プロセスを並行して実施した。すでに各種催事印刷物(エフェメラ類)701種、計2,724アイテム(重複分含む)のデジタル化が完了、大型アイテム(ポスター等)95件については専門機関にデジタル撮影を依頼した。アイテムの所在情報未詳の催事32件分の仮レコードや、草月会/慶應義塾大学アート・センター未所蔵アイテム28件に関する二次レコードなどを含めることにより、催事印刷物の総目録におけるレコード総数を772件に更新、当該目録をデータベースへと接続した。本研究が対象とする草月アートセンター全催事件数を昨年度の251件から304件に修正、全催事の基本レコードをデータベースの設計・構築プロセスの基底とし、各催事の詳細レコード3,487件(発表先品単位)、各催事に言及のある新聞記事504件・雑誌記事203件の書誌情報をを当該データベースに追加した。また本年度より、記録写真(紙焼きあるいはポジ・ネガフィルム)の所在調査、被写体同定、分類、デジタル化に着手している。本研究において構築中のデータベースの一部をニューヨーク近代美術館の研究組織(C-MAP)と共有し、同組織の協力により、全催事のタイトルほか各種リソースの英訳が進められている。現在、データベースのスキーマにおける各種属性の定義や属性値の記述形式の定義、論理的構造などを随時検討し、軌道修正の余地を残しつつ、「簡易情報」「基本情報(催事単位)」「詳細情報(発表作品単位)」「追加・補足情報」の4階層のデータベースを構築中である。本年度の質的・量的成果により、物理的な資料体の編成と、そのような編成プロセスを表現するデータベース、双方の輪郭が鮮明になってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の資料体編成プロセスに伴う最終課題、すなわちウェブサイトをインターフェイスとするリソースの発信・共有に向けて、然るべきスケール・深度のデータベースの準備が整いつつある。本年度「東京 1955-1970――新しい前衛」展を開催したニューヨーク近代美術館との相互協力により、リソースの英訳に関しては当初の予定よりも早くプロセスが進行した。また本年度より同館のサブサイト「POST」にて、本研究の成果の一部である草月アートセンター全催事印刷物(エフェメラ類)の総目録が一般公開されている(基本情報のみ)。この試みは次年度に本研究がより詳細かつ網羅的なリソースを発信するためのウェブ・インターフェイスの設計・構築プロセスにとって非常に有効なテストとなった。なお本研究の研究代表者は24年度より、ニューヨーク近代美術館の研究組織 C-MAP(Contemporary and Modern Art Perspectives)の活動に招聘アーキヴィストとして協力しており、データベースのスキーマにおける各種属性の定義や、属性値の記述形式の定義、論理的構造などについても、同組織メンバーと随時、意見交換、リソースや技術の共有等を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
草月アートセンターで行われた全催事の詳細情報(催事プログラム、参加作家、発表作品等の情報)のメタデータ化と、記録写真等(催事の事後的な情報)の二次収集に重点を置きつつ、「簡易情報」「基本情報(催事単位のレコード))」「詳細情報(作品単位のレコード)」「追加・補足情報」の計4階層の構造を持つデータベースの設計・構築を進める。催事印刷物(エフェメラ類)の総目録作成プロセスや関連書誌情報の入力から出発した本データベースを、レコードの拡充可能性の諸条件を整えつつ、また、常に軌道修正の余地を残しつつ構築していく。一方、リソースの拡充可能性及び精度向上の条件として、本研究における資料体編成プロセスは常に国内外の多くの研究者の眼(関心)にさらされる必要があるため、リソース発信のためのウェブ・インターフェイスの設計・構築を進め、各種リソースの早期公開を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料体編成プロセス補助者への謝金(アルバイト代+交通費)、フィールド・ワーク(国内・海外)のための旅費、各種リファレンスの購入、データベース公開用ウェブ・インターフェイス設計・構築協力者への謝金に充てる。本年度に予定されていたニューヨーク近代美術館のアーカイヴ施設(MoMA Archives)への調査訪問は、本研究の代表者である上崎千が同美術館の招聘アーキヴィストとして実施したため、旅費が発生しなかった。繰り越された旅費は次年度のフィールド・ワーク(国内・海外)に充てる。
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