2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720100
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
兼岡 理恵 千葉大学, 文学部, 准教授 (70453735)
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Keywords | 風土記 / 受容 |
Research Abstract |
本年度は、近世・近代における風土記受容に関する資料収集・調査を行った。まず8月に兵庫・姫路文学館、同県・福崎町立柳田國男・松岡家記念館にて、近代に刊行された『播磨国風土記』注釈書である井上通泰『播磨国風土記新考』自筆原稿、および通泰関連資料調査を行った。 また8月に岡山・吉備地方、11月に大阪・住吉、兵庫・明石、灘周辺の風土記関連遺称地の現地踏査を行った。 さらに近世国学における風土記研究として本居宣長を取り上げ、宣長の著作を中心に検討し、その成果を「宣長と『出雲国風土記』―『古事記伝』の視座から―」(山下久夫・斎藤英喜編『越境する古事記伝』森話社 2012)として論文化した。本稿は風土記研究をはじめ、宣長研究にも新たな視点を与えた論考として、学界において高い評価を得た。 2013年1月には、円珠庵における契沖忌に赴くとともに、大阪にて契沖・樋口宗武研究会を開催した。また1~3月に大阪府立中之島図書館、川越市立図書館、国立国会図書館、国立公文書館、国文学研究資料館、東京大学総合図書館等にて契沖・今井似閑に関する資料調査・収集を行い、その成果を「契沖『円珠庵雑記』をめぐって―円珠庵本・写本伝播を中心に―」として、鈴屋学会において研究発表を行った(2013年4月21日 於:本居宣長記念館)。本発表は論文化し『鈴屋学会報』にて発表する予定である。 さらに2013年1月、姫路文学館における『播磨国風土記』展を見学、同館所蔵の『播磨国風土記』関連資料を調査した。なお本展示では、兼岡の著書『風土記受容史研究』(笠間書院 2008)が、風土記研究史の一端を示す資料として陳列された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画時に予定していた下総・常陸地方の古文書調査が、調査先の事情等で困難になっているため、別方向からの調査方法を検討している。 兵庫・姫路における『播磨国風土記』関連資料収集が、本年度の大きな成果である。さらに同県・姫路文学館、福崎町立柳田國男・松岡家記念館と、研究協力体制を結べたことにより、播磨地域における研究基盤が整備された。 また今井似閑、契沖に関する文献調査・収集を進める一方、本居宣長の風土記研究を検討したことにより、近世国学における風土記研究の流れが見えてきた。 なお、研究の基礎的資料とする五風土記系統リストの作成、風土記注釈集成、風土記言説集成の作成は、対象とすべき文献が膨大であるため、次年度以降も継続的に行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、風土記撰進官命1300年にあたり、風土記ゆかりの地における地方自治体・博物館、また各種学会等で、特別展示やシンポジウムが開催予定である。兼岡も関連するシンポジウム・学会等に複数参加予定であり、その席上で、これまでの研究成果を発表する予定である。また各地展示・シンポジウム参加にあわせて、同地の資料調査・風土記関連遺称地の現地踏査を行う。 その一方、近世における風土記研究関連資料収集、また国学者の著作を中心とした「風土記注釈集成」「風土記引用集成」「風土記言説集成」の作成を継続して進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)