2012 Fiscal Year Annual Research Report
リージェンツ・パークの成立過程を通してみる19世紀英国都市公園の発展
Project/Area Number |
23720152
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
芝 奈穂 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (80552314)
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Keywords | 公園 / 近代都市計画 / 19世紀 / ロンドン / リージェンツ・パーク / リージェント・ストリート / 王立植物協会 / 温室 |
Research Abstract |
19世紀都市公園成立の先駆的存在であり、また、近代都市計画の萌芽とされるロンドンのリージェンツ・パーク計画について継続して考察した。2年間プロジェクトの最終年度にあたる24年度においては、前年度に収集した国立公文書館(ロンドン)所蔵の王立公園関係文書、地図、図版、設計書等の史料分析を行い、さらに、同文書館とウェストミンスター市文書館(ロンドン)での補足調査(政府各種委員会文書および王立植物協会文書の収集)も実施した。 24年度の研究から得られた知見は以下のとおりである。 1. 当該公園計画と同時期に計画されたリージェント・ストリート建設は、ともに19世紀前半におけるロンドンのウェストエンド改造(都市計画)の骨子をなしているが、当初、重視されたのは、公園計画の方であった。前年度の調査から王領地であった本公園の設計には地主貴族によるエステート経営(不動産経営)の手法が活かされており、投機的目的が大半であることが明らかとなった。さらに、24年度の調査を通じて、リージェント・ストリート建設も、公園の土地価格を上げる目的で計画されたことが判明した。 2. 本公園が一般公開された直後の1838年、王立植物協会によって公園内に植物園が設置され、巨大温室も建造されたが、これらは会員しか入場できないものであった。特に、巨大温室については、24年度の調査を通じて、19世紀にはロンドン上流・中流階級の娯楽空間であったことが明白となった。 23年度および24年度の研究を通して、本公園は、少なくとも計画初期段階から19世紀の後半に至るまで、全ての階級が無料で楽しむことができる施設を謳ってはいたものの、投機的目的や富裕層への娯楽提供という側面も顕著であり、「公園」と呼ぶにはまだまだ限定的と言わざる得ない複合的な空間であったことが結論として導き出された。
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