2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720170
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
高橋 優 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (40557617)
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Keywords | クレメンス・ブレンターノ / 『ゴドヴィ』 / Sinn / Wahnsinn |
Research Abstract |
今年度は主にドイツ・ロマン主義の詩人クレメンス・ブレンターノ(1778-1842)が「マリア」という偽名で発表した小説『ゴドヴィ』(1801)の研究に従事した。予算は主に、国内での一次文献、二次文献の購入費用、及び研究成果発表のための国内旅費に充てられた。研究の目的は、クレメンス・ブレンターノ最初の長編小説『ゴドヴィ』を初期ロマン主義から後期ロマン主義への移行期の作品と位置づけ、当該作品の分析により初期と後期のロマン主義の相違点を明らかにする包括的ロマン主義研究の礎を築くことである。 本研究の成果の一つは、平成25年11月、東北大学において開催された「東北ドイツ文学会」研究発表会において行われた発表「クレメンス・ブレンターノ『ゴドヴィ』における“Sinn“と“Wahnsinn“について」である。初期ロマン主義者たちが提唱した超感覚的世界を感覚的に体験可能なかたちで描出する試みとしての「感性的宗教」が、ブレンターノにおいては「官能の狂気」として継承されている点、及び初期ロマン派の「絶対的なるもの」への無限の憧れがブレンターノにおいては「無」への回帰への憧れに変わっている点において、『ゴドヴィ』が初期ロマン主義から後期ロマン主義への文学史的転換を告げる作品であるということが本発表で明確に示された。本発表の原稿を加筆、修正したものが近々「東北ドイツ文学」に論文として掲載される予定である。 23年度から続く本研究において、ノヴァーリス、フリードリヒ・シュレーゲルに続きブレンターノに関して一定の成果を挙げることができ、ロマン主義の全体像の把握に大きく前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期ロマン主義と後期ロマン主義の転換点となるクレメンス・ブレンターノ『ゴドヴィ』研究により、ロマン主義の輪郭がかなりの程度明確になった。しかし所属が変わり、従来通りの発表媒体が確保できなかったため、研究成果発表の多くが26年度以降に持ち越されてしまった。しかしこれは純粋に外的理由によるものであって、研究自体の遅れや停滞を意味するものではない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は本研究最終年度であり、集大成の年となる。始めに5月のアイヒェンドルフ協会研究発表会において、ノヴァーリスの「神話」概念について発表を行う。これはノヴァーリスからブレンターノ、クライストへと至る幅広いアプローチを試みる発表であり、ロマン主義研究への大きな貢献となることが期待される。これは26年度のアイヒェンドルフ協会の年報に論文として掲載したいと考えている。秋以降はクライストの『マリオネット劇場』に関して研究成果を発表し、初期から後期へのロマン主義の移行を一つの流れとして示すことで、本研究の締めくくりとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度研究成果の一部を、アイヒェンドルフ協会からの依頼により26年5月の研究発表会にて発表することとなった。それゆえ予算の一部を26年度に回す必要が生じた。 5月の研究発表に要する文献を収集する目的で既に使用済みである。
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Research Products
(1 results)