2011 Fiscal Year Research-status Report
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23720171
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鳥山 祐介 千葉大学, 文学部, 准教授 (40466694)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | (1) 外国文学(中・英・仏・独除く) / 西洋史 / 美学 / 文学論 / 国際情報交流 / ロシア:英国:フィンランド |
Research Abstract |
これまでの研究成果と内外の図書館で収集した文献を用いてロシア語論文「"Английский сад" как метафора в сочинениях Н.М. Карамзина(カラムジンの作品におけるメタファーとしての英国式庭園)」を執筆し、カリフォルニア大学バークレー校教授(元ライデン大学教授)ヨアヒム・クライン氏の監修になる18世紀ロシア文化論集(表題未定)に受理された。カラムジンの著作において、「自然」と「芸術」の間で両義的な性格を持つ英国式庭園が、「民主主義の放縦」と「専制による秩序」の間の緩やかな君主制という理想社会のメタファーとして用いられていることを、詩「賜物」や小説「現代の騎士」など従来の研究で触れられてこなかった著作の例をも挙げつつ示したもので、平成24年度中に刊行される予定である。23年度まで平行して進めていたヴォルガ表象の研究は、当研究と内容的に関連が深く、当研究の成果が多く反映している。23年8月には北京において行われた東アジアスラヴ学会において報告「ナポレオン戦争期のロシア詩におけるヴォルガとネヴァの表象」、2012年1月には英国スラヴ東欧学会の分科会"Study Group on Eighteenth- Century Russia"にて報告「エカテリーナ期~ナポレオン戦争期のロシア詩におけるヴォルガ表象」を行い、24年3月には論文「エカテリーナ期‐ナポレオン戦争期のロシア詩の中のヴォルガ」を発表した。これらの報告を行う中で、中国、韓国、ヨーロッパ諸国の研究者と交流し、今後の研究発展のための足掛かりを得た。特に北京ではミラノ大学のレベッキーニ氏(ロシア文学)の知己を得、ホデスドンではクライン氏、オックスフォード大学教授ゾーリン氏と交流をしたほか、帰国後もメールによる情報交換を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果および23年度の海外の研究者との情報交換の成果より、18世紀ロシア文化史における重要な存在の一人カラムジンの作品における英国式庭園の問題について論文を執筆することができ、近代ロシアにおける風景表象の問題を考えるうえで重要な一成果を残すことができた。ただし23年度はロシア本国やフィンランドにおいて1次資料を収集する時間的余裕を持つことができなかったので、新たな一次資料を用いることによる研究の発展は次年度以降の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に行った研究成果を発展させ、平成24年度以降にはテクストの成立条件となったテクスト外の社会的・歴史的コンテクスト、即ち「歴史的事実」の調査に重点を置き、研究の基礎となる客観的な情報を丁寧に掘り起こしていく。特に24年度にはジュコフスキー、シャリコフ、イズマイロフといった作家の詩や旅行記を扱いつつ、ロシアにおける風景表象の問題を考える予定だが、これまでは一次資料の不足のため、テクストの成立背景を説き起こすことが十分にできないでいる。従って、ロシアやフィンランドの図書館を利用して一次資料を収集するとともに、様々な言説を生み出した背景、生活の様相を明らかにすることで、研究に厚みを持たせたい。具体的には平成24年4度夏期に資料収集を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度夏期には、ロシア国立図書館(モスクワ)、ロシア国民図書館(サンクトペテルブルク)、フィンランド国立図書館スラヴ文献部門(ヘルシンキ)での1次資料収集を予定しており、海外旅費が必要となる。また最新の研究成果を常に把握する必要があるため内外の研究書を購入する必要がある。また、外国語に(ロシア語ないし英語)による研究成果発表を行う際にはネイティブチェックが必要となるため、謝金が必要となる。
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Research Products
(4 results)