2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720171
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鳥山 祐介 千葉大学, 文学部, 准教授 (40466694)
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Keywords | ロシア文学 / 西洋史 / 美学 / 文学論 / ロシア / 英国 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成24年度は、平成23年度に行った研究成果を発展させ、平成24年度にはテクストの成立条件となったテクスト外の社会的・歴史的コンテクスト、即ち「歴史的事実」の調査に重点を置き、研究の基礎となる客観的な情報を丁寧に掘り起こしていく作業を行った。 具体的には、西欧の風景論のロシアへの流入過程、当時の美学理論、ロシアにおける旅行の発展や地理的認識に関する調査を、歴史学の成果を参照しつつ行った。特に今年度は、ナポレオン戦争期のロシアにおける文学作品や雑誌記事といったテクストに注目し、その中でロシアの各地方に関する地理認識がどのように示されているかという点を探究した。 平成24年8-9月にはサンクト・ペテルブルグのロシア国民図書館、ヘルシンキのフィンランド国立図書館スラヴ文献部門等で資料収集を行った。平成24年10月には、ここで収集した資料を検討した成果の一部を、「対ナポレオン戦争期のロシア文化と空間移動」と題して、日本ロシア文学会全国大会にて発表した。 平成24年度には前年度に第4回スラブ・ユーラシア研究東アジア学会(於北京)で報告した報告に基づく論文「対ナポレオン戦争期のロシア詩におけるヴォルガとネヴァの表象」(中国語、買茜訳)が、中国の学術誌『ロシア文芸』に掲載された。また、平成24年度に他経費の援助を受けて執筆した論文「イズマイロフ『南ロシアへの旅』に描かれたウクライナ」(未刊)は、本研究と問題意識の一部を共有しており、本研究の成果が反映している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究においては、対ナポレオン戦争期のロシア文化のアイデンティティをめぐる問題に関して、ロシアおよびフィンランドで比較的余裕をもって資料収集にあたることができたため、資料面で大きな成果があった。また10月の学会報告ではその成果をある程度形にすることができた。本研究は現時点でおおむね順調に進展していると判断される。 なお、前年度に執筆したてロシア語論文「"Английский сад" как метафора в сочинениях Н.М. Карамзина(カラムジンの作品におけるメタファーとしての英国式庭園)」は刊行が遅れており、平成25年度に刊行される予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、これまでに得られた研究成果に基づき、18―19世紀初頭のロシア文学・文化に関して、同時代の視覚文化やロシアの政治文化といったコンテクストとの関連において総括的な記述を行う。引き続きロシアなど国外で資料収集を行い、専門家との討議を重ねる。最終的には研究結果を取りまとめ、本研究の成果を総括する論文ないし図書を執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究においては、前年度と同様に資料費が必要となる。また海外における資料収集のため、旅費が必要となる。また、外国語で論文を執筆する際にはネイティブ話者による校閲への謝礼が必要となる。前年度は時間的都合から例年英国で開催される所属学会への参加を見送ったこともあり研究費の残額が生じたが、平成25年度にはその分より余裕をもって資料収集に取り組むことができると予想される。
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Research Products
(2 results)