2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720218
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
渋谷 良方 京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (70450690)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / アメリカ / イギリス / デンマーク |
Research Abstract |
形容詞は、話者が世界や状況を描写する際に用いる言語カテゴリであり、使用には話者自身の状況への態度や評価が含まれる。認知言語学は、話者の外部世界に対する主体的な解釈や意味づけ、又カテゴリ化等の一般的な認知能力を基盤として、規則よりも「使用」、そして使用に伴うスキーマの抽出を重視する「非還元主義的」で「ボトムアップ的」なアプローチを展開しており(山梨 2000)、形容詞研究にとっても有用な枠組みを提供する。 本研究の目的は、最新の認知言語学の知見に基づき、「英語形容詞の意味と構文との関係」を調査することである。なお、言語学では量的アプローチの価値が高まっており、特に最近では、認知言語学理論とコーパス・データに基づく実証的研究の融合の重要性が主張されている(Gries & Stefanowitsch 2006)。 本研究は、共時的・通事的なコーパス・データとその統計解析に基づく研究を行う。当該年度は、「研究実施計画」に基づき、共時的コーパス・データについての基礎調査と分析の方針決定を目指して、次の手順で研究を行った。1、British National Corpus(以下、BNC)とBritish component of the International Corpus of English(以下、ICE-GB) に含まれる形容詞の中で、調査対象とする「形容詞リスト」を作成する。2、リスト中の形容詞の事例をBNCとICE-GBから入手する。3、「標本」について、共起語や意味や生起する構文等に関する情報をコーディングする。4、調査結果について、多変量解析(例:回帰分析、主成分分析、クラスター分析)などを行う。5、解析結果を検討する。認知言語学の構文文法、特にラディカル構文文法(Croft 2001)の視点からデータを検証する。6、調査結果を成果報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、現在おおむね順調に進んでいると言えるが、研究が軌道に乗るまでに幾つかの問題を経験した。まず、当該年度の目的は、共時的コーパス・データの標本についてコーディングを行い、それを統計解析するというものであったが、そもそもデータのサンプリングの方法に関する問題や、共起語や意味や生起する構文等に関する情報のコーディングの方法について、どのように客観性を保ちつつも、コーパスから得られる大量のデータを処理することができるのかについて、多くの事前調査や試行錯誤が求められた。結果としては、構文と語との共起性の強さの測り方については、Collostrutional analysisを採用しながら、意味分類についてはWordNetを使う形となったが、特に意味分類についてはデータの量が多いために苦労した。さらに、当該年度では、テキストマイニングの手法を取り入れることを決定したが、これに至るまでにも幾つかの試行錯誤が行われた。 ただし、上記の通りに、研究の進め方についての方針が固まったので、現在の研究はおおむね順調に進展しており、現在では共時的コーパス・データについて、英語の形容詞とその構文間における分布をかなり明示的に表示できるようになっている。研究成果は幾つかの場面で発表してきたが、最新の成果については2012年7月にイギリスで開催される予定の第4回イギリス認知言語学会(4th UK Cognitive Linguistics Conference)で発表する予定である。そこでは、大量の英語形容詞について、限定構文と2つの叙述構文における分布を構文文法の観点から説明し、テキストマイニングの手法に基づきながら、Collostructional analysisやクラスター分析を用いて、それぞれの構文を特徴づける。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは英語の共時的コーパス・データの分析が中心的課題であったが、今後はこれまでの研究成果に基づき、英語の通事的コーパス・データについての基礎調査と分析を行う。以下が、その大まかな手順である。1、平成23年度に決定した「調査対象の形容詞」について、通事的コーパスを用いてデータを入手する。2、1で得られた「標本」について、共起語や意味や生起する構文等に関する情報を研究補助員(アルバイト)と共にコーディングしていく。3、2の調査結果について、多変量解析(例:回帰分析、主成分分析、クラスター分析)やCollostructional analysisを行う。テキストマイニングやデータサイエンスの手法を用いる。4、3の解析結果を検討する。言語変化モデル(Bybee 2007、Croft 2000、Blythe and Croft 2009)の視点からデータを検証する。5、4の調査結果を成果報告する(学会や学会誌等における発表)。 当該研究の最終年度には、平成23~24年度に得られた共時的データと通事的データの分析結果を総合的に検討し、形容詞の意味と構文との関係を明らかにする。英語の特徴をさらにより明確にするために、英語以外の世界の言語における修飾(限定)用法と叙述用法の使用と分布について、英語についての調査結果と比較する。調査方法は、類型論研究において発表されている文献やデータベース(例:The World Atlas of Language Structures)を用いる。さらには、データベースの公開準備に取り組む。最後に、成果報告をする(学会や学会誌等における発表も含む)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、まずは通事的コーパスと、通事的データを分析するためのデータサイエンスの手法を紹介する文献の購入が必要不可欠である。以下が、次年度に必要とされる主な研究費の使用計画である。なお、繰り越した金額については、主に下記の項目2と4にて使用したいと考えている。1、研究補助員として大学院生や英語母語話者のアルバイトを雇い、人手による作業を分担する。これによって、研究の進展を著しく進めたい。(人件費・謝金)2、通事的コーパスと通事的データを分析するための手法を紹介する文献の購入する。これによって、最も効果的なデータ分析の手法を確立したい。(物品費)3、本研究には「研究協力者」はいないが、研究を効率的に進めるために、研究代表者の元指導教授のWilliam Croft教授(University of New Mexicon、米国)や、国内・海外の研究者達からの提言や助言を得ていく。これによって、海外の流行に本研究が遅れていないことを確認したい。(謝金)4、研究成果を発表するために学会に参加したり、学会誌へ投稿したりするためにかかる諸費用が挙げられるが、これは研究成果を公開するために必要不可欠なものである。(旅費など)
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Research Products
(2 results)