2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720218
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
渋谷 良方 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (70450690)
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Keywords | 国際情報交換 / 英語形容詞 / 統計解析 / 認知言語学 / コーパス / イギリス |
Research Abstract |
一般的に、形容詞とは、モノの属性を表す語類である。形容詞が述べる対象は幅広く、認知主体である言語使用者が認知する世界の事象・状況だけでなく、事態・状況についての認知主体の態度や評価も含まれる。認知言語学は、言語使用者の外部世界に対する主体的な解釈や意味づけを重視するアプローチを採用しており、形容詞の研究にとっても有用な枠組みを提供する。本研究の目的は、最新の認知言語学の知見に基づいて、「英語形容詞の意味と構文との関係」を精査することである。なお、今日、言語学では量的アプローチの価値がますます高まっており、認知言語学理論とコーパス ・データに基づく実証的研究の融合の可能性については特に強い主張がなされている。本研究は、共時的・通事的なコーパス・データとその統計解析に基づく研究を行う。 当該年度前半は、前年度の流れに基づき、共時的なコーパス・データを以下の手順に従って調査した。1. British component of the International Corpus of English(ICE-GB)を用いて、「限定形容詞」と「叙述形容詞」を抽出した。2. 1で得た「標本」について、共起語や意味や生起する構文等に関する情報をコーディングした。3. 2のデータベースについて、多変量解析などを用いて定量的な分析を行った。4. 調査結果を発表した。 当該年度後半では、通事的なコーパス・データについて、形容詞の意味変化と構文との関係を、以下の手順に従って調査した。1. The Corpus of Late Modern English Texts(CLMET)を用いて、「限定形容詞」と「叙述形容詞」を抽出した。2. 1で得た「標本」について、共起語や意味や生起する構文等に関する情報をコーディングした。3. 2のデータベースについて、多変量解析などを用いて定量的な分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、現在までのところ、おおむね順調に進んでいると言える。ただし、当該年度前半では、コーパスから得られる大量のデータを客観性を保ちながらも、正確に処理する方法についての検討を幾度も迫られたため、当該年度後半で行った通事的研究に至るまで、若干の時間が必要であった。ただし、研究方針が固まってからは、現在の研究はおおむね順調に進展しており、共時的コーパス・データと同様、通事的コーパス・データについても、英語形容詞の構文における分布を明示的に表示できるようになった。主な研究成果は、2012年7月にイギリスで開催された第4回イギリス認知言語学会(4th UK Cog nitive Linguistics Conference)で発表した。そこでは、大量の英語形容詞について、限定構文と2つの叙述構文における分布を構文文法の観点から説明し、テキストマイニングの手法に基づきながら、Collostructional analysisやクラスター分析を用いて、それぞれの構文を特徴づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、英語の共時的コーパス・データの分析が中心的課題であった。当該年度後半では、通事的コーパス・データについての調査を行った。今後の方策は、言語変化モデル(Bybee 2007、Croft 2000、Blythe and Croft 2009)の視点からコーパスに基づいた調査結果を検証することである。研究結果は、もちろん、成果報告していく(学会や学会誌等における発表)。 今後はさらに、英語の特徴をさらにより明確にするために、英語以外の世界の言語における修飾(限定)用法と叙述用法 の使用と分布について、英語についての調査結果と比較する。調査の実施方法は、類型論研究で発表されている文献やデータベース( 例:The World Atlas of Language Structures)を用いることにする。さらには、データベースの公開準備に取り組む。最後に、成果報告をする(学会や学会誌等における発表も含む)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、これまでの成果発表の機会として、学会参加やワークショップ開催やそれに伴う海外の研究者の招聘などに、主な研究費が費やされると考えられる。加えて、データ分析のためのツールや文献の購入も依然として、必要である。なお、研究の仕上げとして、研究補助員(大学院生)を雇うことも計画されている。
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