2012 Fiscal Year Research-status Report
基本外来語の談話構成機能に関するコーパス言語学的研究
Project/Area Number |
23720241
|
Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
金 愛蘭 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 時空間変異研究系, プロジェクト非常勤研究員 (90466227)
|
Keywords | 談話構成機能 / 通時コーパス / 外来語 / 新聞 / 文章 / 基本語 / 基本語化 |
Research Abstract |
本研究は、20世紀後半の新聞記事を資料として、抽象的な事柄を表す外来語が基本語化していく過程を、歴史的・計量的に記述し、その要因を文章論的な観点から明らかにするものである。 具体的には、まず、自ら設計・作成した通時的な新聞コーパスによる語彙調査の結果を整備し、その結果から20世紀後半に基本語化した抽象的な外来語のリストを作成する。次いで、上記コーパスを利用して、外来語とその類義語の用例データベースを作成し、記事別に談話構成機能の分類を行う。最後に、それらの調査結果をもとに、20世紀後半の新聞記事における「抽象的な外来語の基本語化」現象の要因を、文章における談話構成機能の観点から明らかにする。 今年度は、まず、昨年度に引き続き、上記自作の通時的新聞コーパスに、紙面情報などを付加してタグ付きコーパスとして整備(完成)した。タグ付けは、見出しや本文などがわかるよう複数のタグを用意し、作業はアルバイターを雇用して行った。 次に、全文検索システム「ひまわり」を用いてKWICデータを作成し、文章(記事)の中で、外来語が、具体的にどういった機能(主として語彙的結束性にかかわる再叙の機能)を果たしているか、またそれが通時的にどのように変化しているかについて、調査を行った。その結果、連体修飾節構造の中と指示語句の中において、外来語は、前の叙述を「要約」したり「名づけ」たりする「とらえ直し」という機能を獲得・拡大させたことを明らかにした。このことは、20世紀後半の新聞にみられる「抽象的な事柄を表す外来語の基本語化」現象(金2011)が、外来語の文章構成機能の獲得・拡大を言語内的な要因として生じている可能性を示唆するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の計画通り、今年度分をほぼ順調に進めている。昨年度、予算関係(震災により一部研究費の交付が遅れる)でタグ付作業のスタートが当初より若干遅れ、計画の7割程度にとどまっていたが、今年度残りを作業を無事に終わらせた。ただ、資料の「CD毎日新聞データ集(91年版)」に改善すべき点があったため、文字入力業者により「通時的新聞コーパス」を改訂することにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
「CD毎日新聞データ集(91年版)」に改善すべき点(スポーツ面の一部の記事がCDに収められていないことにより、データ量に偏りが生じ、通時的推移をみることに客観性が欠如)があり、該当部分を外注することにした。また、通時的新聞コーパスを利用して、外来語とその類義語の用例データベースを作成し、記事別に談話構成機能の分類を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定(繰り越し)の研究費は、記事のテキスト化のための作業費(外注)として使用する。また、次年度交付額(新規)については、外来語および類義語の用例データベース作成のためのアルバイター謝金、研究打合せ・資料収集および学会等での研究成果発表のための旅費、関連書籍のための消耗品費に使用する予定である。
|