2012 Fiscal Year Research-status Report
英語の高頻度POSグラムおよびフレーズフレーム表現における韻律パターン認識の分析
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23720282
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村尾 玲美 名古屋大学, 大学院国際言語文化研究科, 准教授 (80454122)
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Keywords | 英語教育 / テスト開発 / 音声言語認識 / プロソディ |
Research Abstract |
平成24年度は、前年度に完成させたオンライン型音声認識テストを利用して英語母語話者と帰国子女学生に対してパイロットテストを実施し、得られた結果からテスト項目の精査と録音の取り直し及びプログラムの再修正を行った。 本研究で開発したテストは、高頻度表現を形成する品詞の連なりが韻律的なパターンとして学習者の心的辞書に実在性を持つか否かを評価する目的を持っており、実験項目は1)NNS・NSともに高頻度の連なり、2)NSのみ高頻度の連なり、3)NNSのみ高頻度の連なり、4)NNS・NSともに低頻度の連なりの4種類に分類されている。研究の仮説としては、英語母語話者は3)と4)に比べて1)と2)の認識が高いと考えられる。英語母語話者1名に対してパイロットテストを行った結果、正答率は51%であった。しかしながら、研究仮説に反して条件による正答率の差はなく、チャンスレベルでしか表現を認識できていないという結果が得られた。そこで、考えられる問題点を排除するため、再度実験項目の作り直しと録音の取り直し、音声データの加工編集および実験プログラムの修正を行った。 新しく作り直した音声言語認識テストを用いて英語母語話者4名と上級日本人英語学習者に対し再度パイロットテストを行った。パイロットテストの結果、全体的な正答率の平均は81%と上昇したが、条件による差は依然として見られなかった。今後、母語話者データを更に収集して項目別の分析を行い、正答率が低い項目および、音声再生回数が多く回答時間の長い項目については原因を検討した上で分析から除外することを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成24年度の研究計画では、パイロットテストを行って英語母語話者のパフォーマンスベースラインを確認した上で英語学習者に対して本実験を行い、収集したデータを解析する予定であった。当初の計画に従いパイロットテストを行った結果、重大なエラーが発見されテスト項目を見直すこととなったため、本実験は平成25年度に行うこととした。 パイロットテストが研究仮説に反する結果となったのには次の理由が考えられる。テスト項目の表現を録音する際、表現を文中に埋め込んで読み上げたのではなく、表現のみを提示して読み上げたため自然な読みではなくなり、表現認識に必要な韻律情報が変化してしまったことである。具体的には冠詞や前置詞など弱形で発音される語も強形で発音され、表現の持つリズムとメロディの特徴が消滅していた。そこで48個の表現をそれぞれに含む文を作成し、英語母語話者に一文ずつ読み上げさせたものを録音し直した。その後、一文の中から表現部分の音声のみを切り出し、ファイルに個別に保存した。48個のファイルに対してローパスフィルタをかけ、実験項目を作成しなおした。実験項目の変更に伴いプログラムも修正しなおし、2回目のパイロットテストを実施した。本実験を始めるまえにもう少しパイロットテストの人数を増やし、項目別分析を行ってテスト項目の精査をしてから本実験を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、パイロットテストの継続とテスト項目の精査から研究を開始する。パイロットテストの結果、正答率が低い項目および音声再生回数が多く回答時間の長い項目については、原因を検討した上で分析対象からはずす。パイロットテストを経てテスト項目の修正を行った後、英語学習者からのデータ収集を開始する。前期は名古屋大学の英語サバイバルの授業を履修している学生20名に、英語音声の聞き取りとプロソディの認識の関係について説明したあと、教育の一環として「オンライン型英語音声認識テスト」の受験を授業外で行わせる。また、後期は英語コミュニケーションの授業を履修している学生20名からデータを収集する。比較対象として大学院生10名からも同様にデータを収集する予定である。 得られたデータから、日本人英語学習者が英語音声を聞き取るにあたり、プロソディ情報をいかに利用しているかについて、POSグラム表現を認識する能力の分析を行う。分析方法は二種類である。第一に、オンライン型英語音声認識テストの点数(プロソディ利用 能力)とリスニング問題の点数(リスニング能力)の相関分析を行う。リスニング問題とは、名古屋大学の学生が英語の課外授業として行っている「ぎゅっとe」というリスニング課題1440題のことであり、正答率から学習者の総合的なリスニング能力を把握する。「ぎゅっとe」が課せられていない学生や大学院生についてはTOEICのリスニング得点との相関を分析する。第二に、音声認識テストの項目別難易度の分析を行う。具体的には、英語母語話者コーパスに高頻度で出現するが学習者コーパスには出現しない表現と、両コーパスに出現する表現との間に正答率、音声再生回数、回答時間の差がないかどうか、また、特定の表現パターンのみ認識率が低くなっていないかについて分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画では平成24年度に英語学習者70名に対する本実験を実施する予定であった。パイロットテストの結果により実験項目を作りなおし、パイロット実験を継続したという経緯から本実験の開始が遅れ、平成25年度に行うこととなったため、次年度使用額である164,516円については主に、データ分析のための短期間雇用パートタイム勤務職員への謝金、学会発表のための渡航費、論文執筆のための英文校閲費等に使用する予定である。
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