2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720317
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
横山 陽子 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 特別研究員 (90586504)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本近世史 / 奥羽 / 被差別民 / イタカ / 西宮社人 / 地方知識人 / 被差別民認識 |
Research Abstract |
本研究は近世奥羽の被差別民研究として、大屋士由著「伊多加考」について分析を行うものである。今年度は下記2点について作業を進めることを計画した。(1)田中文庫史料の現地調査今年度は大屋士由著「伊多加考」を所蔵している田中文庫の未整理書簡・史料の概要調査および整理作業を行った。書簡の点数845点、その他史料は79点だが、枝番を含むと1100点前後に及ぶことを確認した。整理作業を通じて、士由をはじめとする地方知識人同士の交流状況をおおまかに把握することができたが、目録作成・撮影作業は、史料点数が予想以上に多く整理作業に時間がかかったこと、また調査協力者を得ることができなかったことから、当初予定していた通りには進めることができなかった。(2)「伊多加考」のテキスト分析会津・仙道地域に存在していたイタカの情報を士由に提供した在村知識人や、「伊多加考」に書き写されている享保―元文年間の仙道地域における西宮社人(イタカ)と吉田家神職の争論について、福島県内の図書館・資料館等での調査を予定していたが、東日本大震災の影響で調査を次年度に延期することにし、かわりに活字史料を中心とする調査を重点的に行うことにした。今年度は全国の西宮社人を支配していた摂津国西宮本社の社用日記と『近世諸国えびす御神影札頒布関係史料集』が刊行され、これに伴い西宮本社の支配に関する研究が発表され、大きな成果に接することができた。特に先行研究では地域研究にとどまっていた関東甲信越・奥羽の西宮支配の概要が示されたことにより、享保―元文年間の争論の重要性を再確認することができ、当研究での課題がより明確となった。また、計画段階では把握できていなかった在地史料を知ることができたが、同時に福島県内の史料についてはほとんど把握されてないことがわかり、延期した史料調査を早急に進めたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
田中文庫史料の現地調査は、予想以上に史料点数が多かったこと、また調査期間に調査協力者を得ることができなかったことから、整理作業に終始し、目録作成・撮影作業を当初計画していた通りに進めることができなかった。テキスト分析のための調査は、活字史料を重点的に行うことで、計画段階では把握できなかった在地史料の存在と、享保―元文年間の西宮社人・吉田家神職の争論の重要性を再確認することができ、先行研究の把握という点では大きな成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度ほとんど進めることができなかった田中文庫の未整理史料群の撮影を早急に終了させ、目録・解読作業に努める。そして当初の計画に入っている大屋士由の交友関係についての分析を行う。このほか西宮神社文書および関係史料、「伊多加考」引用文献についての調査を、西宮神社文化研究所や天理大学附属図書館等で行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
田中文庫史料については現地での撮影作業を早急に終わらせるため、撮影補助機材を増加し、協力者とともに作業を進める。あわせて史料を適切に保存するための容器等を揃え、封筒の入れ替え作業を行う。所属機関で行う史料解読作業も年度内に終わらせるため、研究協力者と共に行う。テキスト分析については福島県・関西での調査を実施する。また研究文献も適宜購入する。
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