2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720337
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Research Institution | Oshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
田口 由香 大島商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00390500)
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Keywords | 日本史 / 近現代史 / 明治維新史 / 慶応期 / イギリス / 長州藩 / 下関開港 |
Research Abstract |
平成25年度(当該年度)に実施した研究の成果としては、イギリス政府と長州藩政府の貿易に対する認識を解明したことである。本研究の目的は、日英の史料を国家機関から個人レベルまで分析することで、幕末期の日本における国際関係を多角的な視点から解明することである。本年度は、イギリス側の貿易視点に着目し、慶応元年(1865年)にイギリスと長州藩の間で持ちあがった「下関開港問題」を中心にイギリスと長州藩の関係を検討した。おもに貿易を視点としたのは、平成24年度までの研究成果として、幕末期における国際関係において、イギリス側は日本との貿易には積極的な姿勢を示すのに対し、日本国内の政局には客観的な立場をとったことが明らかになったためである。よって、「下関開港問題」に関わる双方の史料を比較対照することで多角的な視点からの解明を行った。 「下関開港問題」を取り上げた先行研究では、イギリス側史料をもとに長州藩士高杉晋作らがイギリス長崎領事らに下関開港を提案したとされているが、長州藩側の記録には高杉らが逆に領事らに提案したとある。両史料を比較分析した結果として、長州藩内では長州出兵のなか藩内一致体制確立を第一として下関開港の説を否定しており、イギリスに提案する段階に至っていないこと、一方でイギリス駐日公使オールコックは諸大名が自由な外国貿易を行うために鹿児島と下関の開港を想定していたこと、代理公使ウィンチェスターも諸大名との外国貿易実現を幕府に主張していることが明らかになった。 本研究の意義・重要性としては、イギリス側が自由貿易を実現するため、幕府による貿易独占の廃止と、幕府との条約関係のもとで諸大名との直接貿易を進めようとしていたことが明らかになったことである。また、「下関開港問題」の経緯を解明したことで、一方の史料からでは一面的な見方による偏った歴史像になる一事例を示すことができた。
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Research Products
(9 results)