2011 Fiscal Year Research-status Report
環日本海地域における文化集団の食性変遷に関する研究
Project/Area Number |
23720379
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國木田 大 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (00549561)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 考古学 / 環日本海地域 / 土器付着物 / 炭素・窒素同位体分析 / 放射性炭素年代測定 |
Research Abstract |
本研究は、環日本海地域(ロシア極東・沿海地方、サハリン、北海道)をとりまく文化集団の食性変遷を土器付着物の炭素・窒素同位体分析、C/N分析等を用いた食性分析から解明するものである。研究課題は、(1)土器出現期の様相解明、(2)ロシア極東・沿海地方の文化集団の食性変異、(3)栽培植物の利用と海洋資源への特化の3つであり、文化集団間の変遷が劇的であることが予想される地域や、食性の課題が明確な文化について実証的な研究を行う。食性変遷を詳細に解明することで、文化間の共通性や独自性を浮き彫りにし、新たな角度から文化形成過程を捉えなおしていくことを目指す。本研究計画は、平成23・24年度のロシア極東・沿海地方地域の新石器時代全時期を通した食性変遷を中核とし、平成25・26年度に北海道・サハリンのデータを加える形で進める。 平成23年度は、研究計画に沿ってテーマ(1)(土器出現期の様相解明)の課題について研究を進めた。夏季および冬季に実施されたコンドン1遺跡の発掘調査、資料整理と連携し、資料採取や測定を行った。また比較資料として、近隣地域のゴンチャルカ1遺跡、ノヴォトロイツコエ10遺跡、グロマトゥーハ遺跡、チタ周辺のストゥジョノエ1遺跡の分析も並行して実施した。これらの遺跡の年代は約12,200~8800BPで得られ、新石器時代初期の資料であることが確認された。現状で、各遺跡における炭素・窒素同位体比、C/N比に大きな相違はなく、炭素同位体比がやや軽い傾向を示す。サケ・マスや堅果類利用に偏重した資料は今のところ確認できず、淡水魚類や陸上動物の利用が中心であったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、テーマ(1)(土器出現期の様相解明)に対して十分な成果を得ることができた。研究当初は、既知資料であるゴンチャルカ1遺跡、ノヴォトロイツコエ10遺跡等を中心に分析を進める予定であったが、2009・2011年度に日露共同調査が実施されたコンドン1遺跡の調査と連携することができ、研究計画以上の資料を対象とすることができた。また、日本の対象資料についても北海道東部地域を中心に資料採取を行うことができた。北海道東部地域の主な遺跡は、大正3遺跡、八千代A遺跡等であり、大陸側との差異が注目される。平成24年度に比較検討を行う予定である。 平成24年度の研究課題であるテーマ(2)(ロシア極東・沿海地方の文化集団の食性変異)に対しても、計画を前倒しして平成23年度冬季に沿海州地域の資料調査を実施した。この調査で、ロシアの共同研究者と平成24年度の研究計画を確認し、一部先行して資料採取を実施した。対象遺跡は、ルザノバ・ソプカ2遺跡やベトカ2遺跡であり、アムール流域との関係が注目される重要な遺跡である。 平成23年度の研究達成度は順調であり、平成24年度の研究計画を遂行する上での組織体制も整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は大きく3つある。(1)「研究実施の環境整備」平成23年度は、東京大学総合研究博物館の研究施設と協力することにより、研究を進めてきた。平成24年度は同大学工学系研究科の研究施設を共同利用し、さらなる研究環境の充実を図る。(2)「別プロジェクトとの連携」平成23年度は、別プロジェクトの日露共同発掘調査と連携することにより、多くの資料を得ることができた。引き続き、別プロジェクトと連携を図ることにより、研究対象の充実を目指す。(3)「研究ビジョンの明確化」研究当初の計画通り、各年度の研究課題や対象地域を明確にし、研究を遂行する。特に、3つの研究課題を順守することにより、明瞭な研究成果を得る。各年度の研究計画や成果を明確にし、総括につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、23年度の調査成果を受けて、引き続きアムール流域の調査・分析を進める。テーマ(2)(ロシア極東・沿海地方の文化集団の食性変異)の課題に沿って研究を遂行する。平成22年度以前に研究を実施していたクニャーゼ・ヴォルコンスコエ1遺跡、マラヤガバニ遺跡、バガロツコエ24遺跡等のデータを再検討するとともに、別プロジェクトによって日露共同調査が計画されているウデリ湖周辺遺跡の新資料についても分析対象とする。 平成24年度の後半には、アムール流域の文化集団の食性変遷を、沿海地方と比較検討する。沿海地方の対象遺跡は、平成23年度に資料採取を行ったルドナヤ文化のルザノバ・ソプカ2遺跡、ベトカ文化のベトカ2遺跡を中心に進める。また、冬季には沿海地方南西沿岸部に分布するボイスマン文化のボイスマン2遺跡の資料調査を実施する。 平成24年度の研究計画は、平成23年度にロシア側の共同研究者と協議を行っており、研究体制は整っている。
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Research Products
(4 results)