2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720395
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
北山 峰生 奈良県立橿原考古学研究所, 調査課, 主任研究員 (20332463)
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Keywords | 考古学 / 煉瓦 / 近代化 / 近現代史 / 建築史 |
Research Abstract |
本研究は、煉瓦生産の考古学的な分析を通して、日本の近代化過程とその問題点を明らかにすることを目的とする。研究の成果は、以下の通りである。 発掘資料を観察した結果、手抜成形の痕跡が、煉瓦の長手に特徴的な皺となって現れることを確認した。その視点をもとに、奈良県内に現存する煉瓦構築物を観察し、さらに阪神間における同様の検討成果と比較した。すると、つぎの三点に注目された。 ①関西地方の煉瓦生産は、一貫して手抜成形が主体的であり、機械成形は客体的である。 ②阪神間では同時期に各種の規格が併存し、時系列的な変化傾向を示さない。これに対して、奈良県では時期が下るに従って、煉瓦の厚みが漸増する傾向がある。 ③岸和田煉瓦や推定堺煉瓦といった、関西一円に広く流通する刻印がある一方で、他所にはみられない地域的な刻印もある。いずれにせよ、一施設で複数の刻印が混在するようなあり方は、今のところ多くない。 以上の諸点からは、さしあたりつぎのことがらが指摘できる。 ①は、明治20年代以降、煉瓦生産における機械化が進行したという一般的な説明が、関西地方では成り立たないことを示す。このことは、国策として煉瓦生産が興隆した関東地方と、民間資本を主として開始された関西地方との、宿命的な差が反映している可能性がある。 ②および③は、阪神間の都市に比べて、奈良県はマーケットが小さいことの現れであろう。都市全体が煉瓦を受容する阪神間にくらべて、奈良県では一つの建物、鉄道の一区間、といった小規模な重要な反復されたものと想定すれば、上述の②③を整合的に理解できる。 すなわち、煉瓦の観察を通して、広域流通と地産地消的な流通の双方を追求できる見込みが得られた。
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Research Products
(5 results)