2013 Fiscal Year Research-status Report
中国における企業立地環境の変化と立地調整に関する研究
Project/Area Number |
23720405
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 康久 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (10362302)
|
Keywords | 日系企業 / 現地化 / 電子部品 / 垂直統合 / 垂直分割 / 本社機能 |
Research Abstract |
中国における企業の立地条件の変化にともなう立地調整のあり方を検討するための一連の調査の一つとして、近年、電機・電子部品産業における生産・部品調達における「垂直分割」化に注目した検討が必要になってくる。このような「垂直分割」化の進展にともない、海外に進出した電機・電子部品メーカーでは、海外企業との部品の取引が増加していくとともに、それに対応して、現地法人の責任者や管理職に現地人材が増加していく可能性がある。そこで本年度は、日系電機・電子部品メーカーA社の中間材を扱う上海における3つの販売部門を取り上げ、製品特性の違いにより取引先企業の本社所在地別構成や人材現地化の程度にどのような差異があるのか等について調査を行い、その結果を学術雑誌に投稿した。結論として3つの総括部のうち、中国企業向けの販売比率が最も高い第1総括部では、管理職等への中国人人材の登用が進んでおり、現地法人からの提案を受ける形で中国市場の需要に合わせた製品の開発・販売も行われていたが、それが低い第2総括部と第3総括部ではこのような傾向はみられなかった。特に第3総括部では、垂直統合型の製品を販売しているため、グループ企業等の日系企業への販売が多く、中国人人材の管理職への登用はあまり進んでいなかった。同社では今後いっそう人材の現地化を進めていく必要性が認識されていた。その一方で同社は、日本本社が取引に関する決定権を持ち続けながら、本社の現地法人への支援機能を強化する方針も採っていたことが明らかになった。以上の研究結果は、助成対象が所属する分野の中では、国内屈指の会員数を有する日本地理学会の学会誌『地理学評論』に掲載が認められる等の成果がみられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果が、助成対象が所属する分野の中では、国内屈指の会員数を有する日本地理学会の学会誌『地理学評論』に「論説」というカテゴリーにて掲載が認められたことは、評価できる点である。本研究テーマに基づく研究成果として、既に3年間で全国レベルの査読付学会誌3編などがあり、助成対象者がこれまでに受けた研究助成の中でも、極めて高い生産性を有している。ただ、研究計画書に記載されていた5つの調査計画の中で、最後の1つは難航しているため「評価区分(1)」をつけれらるまでには至らないと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述したように研究計画書に記載されていた5つの調査計画の中で、最後の1つは難航しているため、調査計画の変更を検討している。具体的には、中国における企業の立地条件の変化に関連して、中国の大学生の就職活動や採用のあり方にどのような変化がみられるのかという点についての調査を加えたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
親族(父)が危篤状態にあり、2014年3月15日に死去したため、同年3月に予定していた中国での現地調査を取りやめざるを得なかったため。 本年度は、中国企業の立地条件の変化に関する新たな調査を計画に加え、現地調査を行うため、これまでに繰り越してきた経費を使用する計画である。
|