2012 Fiscal Year Research-status Report
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23720416
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 貴之 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (20455611)
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Keywords | 鍛冶屋 / 北海道 / 変化 / 民俗文化 / 伝統社会 |
Research Abstract |
今年度は、十勝・釧路総合振興局および日高・根室振興局を重点調査地域とし、管内の鍛冶屋の歴史的、技術的特性の解明を図り、それに基づく生存戦略を考察、提示することを目指した。 十勝・釧路総合振興局および日高・根室振興局管内の3市33町3村における調査で確認された鍛冶屋(現在も鍛造を行っているところ)はわずか3軒に過ぎなかった。しかし、かつて鍛冶屋に従事していた方々から明治以降の北海道の鍛冶屋に関する貴重な情報を収集することができ、また、今日に至る経緯や変化などについても聞き取ることができた。特に、羅臼町や厚岸町の鍛冶屋は、以前調査を行った利尻町などの鍛冶屋と同様に、漁業に使用される道具を扱いつつも、昆布漁の道具ひとつとっても地域によって多様(利尻町の「グリグリ」、厚岸町の「ナゲマッカ」など)であり、その多様性が鍛冶屋の変化や生存に大きな影響を及ぼしていることがわかった。どのように地域需要に対応し生存してきたのか、そして、地域的特性がいかにして生み出されてきたかを明らかにする上で、重要な事例となり得ると考えている。 鍛冶屋および鍛冶屋製品等の資料に関する調査については、羅臼町郷土資料室、本別町歴史民俗資料館、厚岸町郷土資料館、厚岸町海事記念館において資料調査を行い、特に厚岸町海事記念館では、厚岸町の鉄製漁具に関する情報を数多く収集することができた。 これらの成果については、ホームページにおいて公開・発信し、さらなる情報の収集に役立てる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の調査研究により、道東地域(十勝・釧路総合振興局および日高・根室振興局)における資料・情報の収集、ならび現地調査が完了した。 これにより、現時点で完了している地域は、道北、道南、道東地域となり、その調査範囲は着実に拡大しているほか、調査研究の進展に伴う資料・情報等の収集についても徐々にその成果が得られている。次年度、次年度で道央地域(上川、オホーツク、空知、胆振、後志)での調査を完了することで北海道内の現在の鍛冶屋の実態をおおむね把握できることになることから、本研究の目的の達成に向け見通しが立ちつつある。 しかしながら、予想以上に鍛冶屋の衰退が進んでおり、比較、分析するのに必要な資料・情報が質的にも、量的にも未だ十分ではなく、各地域の鍛冶屋の歴史的、技術的特性の解明や今後の鍛冶屋の生存戦略の考察、提示といった成果を得られる段階にはいたっていないため、課題も多い。 同時に実施している各市町村の博物館、郷土資料館等で保管されている鍛冶屋関係資料に関する情報の収集については、予想以上に関係資料が膨大であるため、当初の予定からは遅れており、一部市町村でのみの成果にとどまっている。鍛冶屋関係資料に関する情報の収集に関しては、当初の目的を期間中に達成することは困難な状況にあり、現在対応を模索中である。 また、本研究で得られた情報と成果を発信するために整備している本研究のホームページについては、昨年4月より公開を開始し、段階的にページの充実を図っている。昨年の8/31より「北海道の鍛冶屋MAP 1942年度版」を公開し、引き続き「北海道鍛冶屋関連資料データベース」のベース作りを進めている。また、随時、その進捗状況や成果の報告、公開にも努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は道央地域(空知・上川・オホーツク・総合振興局)、平成26年度は道央地域(胆振・後志総合振興局)の各市町村の教育委員会、商工会、博物館、資料館などの協力を得て、現在も鍛冶屋を営む人びと、及びその経験を有する人びとに関する情報を収集する。同時に、各市町村の博物館、郷土資料館等で保管されている鍛冶屋関係資料に関する情報の収集も行う。 得られた情報をもとに現地調査を実施し、各鍛冶屋の現在に至る経緯や現状などに関する情報を収集し、また、各市町村の博物館、資料館等において綿密な資料調査を実施することで鍛冶屋関係資料に関する詳細な情報を丹念に渉猟し、本研究のベースとなる基礎情報を可能な限り収集する。また、得られた情報は、「北海道の鍛冶屋MAP」や「北海道鍛冶屋関連資料データベース」として整理、編集し、随時本研究の専用HP上に掲載し、情報と成果の発信にも努める。 さらに、各地域の鍛冶屋に生じた変化と生き残るための対応を比較、分析することで、道東地域および道北地域の鍛冶屋の歴史的、技術的特性の解明を図る。また、現在も順調に営業を続ける鍛冶屋を選定し、それらが実践している戦略をもとに、今後の鍛冶屋の生存戦略を考察、提示する。 また、上記調査と並行して、道央地域(石狩振興局および空知総合振興局南部)の各市町村の鍛冶屋および道央地域の博物館や郷土資料館で保管されている鍛冶屋関係資料に関する情報の収集にも努め、現地調査を実施し、本研究のベースとなる基礎情報を可能な限り収集する。特に、鍛冶屋関係資料については、北海道の民俗文化の研究拠点の1つである北海道開拓記念館の膨大な収蔵資料と、北大総合博物館に所蔵されている開拓初期の貴重な未整理資料を中心に、情報の渉猟と整理、データベース化にあたる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた理由は、昨年度使用した研究費の精算処理が遅れ、4/3となったためである。このため、当該研究費は、すでに使用済みであり、今年度使用する計画はない。
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