2011 Fiscal Year Research-status Report
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23720429
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
福武 慎太郎 上智大学, 外国語学部, 准教授 (80439330)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 東ティモール |
Research Abstract |
現在の東ティモール民主共和国の「国民文化」に大きな影響を与えたティモール島中央南部のウェハリ王国の歴史について、民族誌や植民地行政文書における言及箇所の確認、現地調査等によって、その文化的影響力のひろがり、そして現在どのようなかたちで東ティモールの「国民文化」に引き継がれているか研究をおこなった。 平成23年8月に実施した東ティモール民主共和国における現地調査では、村落共同体においてどのようにウェハリの歴史が語り継がれているか聞き取りをおこなった。また中学高等学校における歴史教育のなかでどのように記述されているか確認した。文献史料調査と現地調査を通じて、ティモール島におけるキリスト教ミッションの歴史を確認することによて、東西国境をはさんでカトリック教会の存在感のあるキリスト教文化圏が形成されていることを明らかにした。他方、東ティモールの東部の非テトゥン語圏と西部のテトゥン語文化圏のあいだにはある種の文化的断絶があることも確認された。 これまで、東ティモールの民族意識を前提として考えられてきた難民問題、国民和解の問題であるが、ティモール島における実際の宗教と言語の位相をみると、東ティモール国内における東西の文化的な違いと、国境をはさんだ東西ティモールの文化的近似性が明らかになり、難民問題や国民和解の問題に新たな視座を提供することが可能になった。たとえば1999年の難民問題は、戦乱から逃れるために「国境」を超えインドネシア領ティモールへ避難した人々であると考えられ、想定以上に難民が増加したことから、インドネシア側の「人質」と考えられた。ところが実際には、親族がおり言語と宗教と共有する社会の内部での移動であり、より主体的で自由な動きであった人々が多かったことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた東ティモール民主共和国における現地調査により、おおむね順調に進展している。ただし、予定していたポルトガルの公文書館における史料調査を延期したために、若干が進展が遅れている。ポルトガルにおける史料調査は24年度内に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度はインドネシア共和国、東ティモール民主共和国、そしてポルトガルにおける現地調査を予定している。インドネシア共和国、東ティモール民主共和国においては、それぞれ地方レベルでおこなわれている歴史教育のなかでどのように過去の王国や植民地化の経緯が扱われているかを確認するとともに、博物館展示の分析をおこなう。ポルトガルにおいては過去の植民地化の経緯、キリスト教ミッションの経緯に関する資料の閲覧をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主としてインドネシア共和国、東ティモール民主共和国、そしてポルトガルにおける現地調査に係る旅費に使用する予定である。またデータ整理のためにデスクトップ・コンピュータの購入も予定している。研究成果の公開方法として、昨年より開設したホームページの更新作業にかかる謝金も計上している。
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Research Products
(2 results)