2013 Fiscal Year Research-status Report
学術資料/文化遺産の所有とその活用についてのアラスカ先住民との共同実践研究
Project/Area Number |
23720436
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
久保田 亮 大分大学, 経済学部, 准教授 (80466515)
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Keywords | 国際情報交換 / 文化人類学 / 先住民 / 文化遺産 / 学術資料 / 恊働 |
Research Abstract |
本研究は、「調査する側」と「調査される側」の双方が「研究資料・文化遺産」を活用できる体制を構築することを目的としている。本研究が採り上げる資料は、日本人民族音楽学者が1970年後半から1980年代にかけて米国アラスカ州で採録した音声資料である。本年度は、(1)採録者の研究史を再構成するための資料収集とその分析、(2)国内外でのワークショップへの参加および博物館関係者との意見交換、(3)現時点における研究進捗状況の口頭発表、(4)採録地住民との資料の公的利用に関する議論、を行った。これらの研究活動に基づく成果は以下の3点である。 ①昨年度収集した資料(当該資料を採録地の文化的文脈に位置づけて検討するための資料)に加え、採録者の研究活動史に当該資料を位置づけるための資料の収集を進めることが出来た。それを検討することで当該資料が「極北の音の文化」を比較検討するための基礎資料として位置づけられていたことが明らかになった。これは当該資料がローカルレベルの文化を理解するための基礎的資料であると同時に、極北圏の諸先住民文化を横断的な検討を可能とする資料であることをも示唆しており、当該資料はさらなる重要性を帯びていることがわかった。②国内外のワークショップに参加することで、研究資料の公共化をめぐる国内外の実践事例に触れることが出来たとともに、国内外の博物館関係者との意見交換を行い、学術資料利用についての知見を深めることが出来た。③現時点での研究成果をアラスカ州にて口頭発表を行い、同州をフィールドとする人類学者、文化遺産の今日的利用に関心があるアラスカ先住民自身から本研究に対するフィードバックを得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・対象となる研究資料の採録地に暮らす人びとにとっての価値だけでなく、採録者の研究活動にそれを位置づけることでさらなる学術的価値を確認することが出来たことは、研究資料の将来的な管理利用を考えるうえで非常に有益なことであり、資料それ自体の検討は順調に進んでいる。また国内外の研究者、とりわけ先住民コミュニティで収集された民俗資料標本を取り扱う博物館関係者との意見交換は、本研究が対象とするような無形文化遺産の公的利用を考える上で多くの示唆に飛んでおり、その意味で本研究の質的向上を図ることが出来たと言える。 ・しかし予定していた資料採録コミュニティとの間との、当該資料の管理利用についての議論の進展具合は十分と言えるものではなく、当初の計画を上回る進展はみられない。加えて、本研究の対象たる研究資料が採録者の遺族から国内の公的機関に寄贈されることが内定したため、研究の計画について若干の変更を加える必要性が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は対象とする研究資料が国内の公的機関に寄贈されることが内定したことで、計画を一部変更する必要があるが、引き続き採録地コミュニティ住民との間で研究資料の管理・利用をめぐる意見交換を続けていくとともに、その相互交渉の過程について微細に記録し、それを通して資料の展示、閲覧、利用についてのガイドライン作成のために有用な事例の提供および、将来的な研究機関と採録地コミュニティとの交渉の土台の確立を目指すという方向性で研究を進めていく。なお当該資料を受け入れる予定の研究機関(国立民族学博物館)の担当者からは、本研究を継続することについて差し支えない旨の回答を得ていることを付記する。
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Research Products
(2 results)