2012 Fiscal Year Research-status Report
中国土地所有権制度改革の下で顕在化する農地争奪問題の法的分析
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23730009
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
長 友昭 拓殖大学, 政経学部, 助教 (20555073)
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Keywords | 所有権 / 物権法 / 財産権 / 集団所有権 / 請負経営権 / 農地 / 中国 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
平成24年度は、中国の土地所有権制度改革の下で農地の権利の集約化および農民と農地の切り離しがどのように進んでいるのかについて、主に1次資料の分析を中心に研究を進めた。 分析対象とした1次資料については、平成23年度以降、海外共同研究者などの協力により得られた契約文書や政策文書であり、これらの文書から、従来型の農地の権利関係を表す文書の存在が一定の分量で確認できた。また、政策文書などについても、これまでの農地制度改革の過程や成果を示すものや今後の課題を示す重要な文書がいくつか出されており、これらについて理解を深めることができた。すなわち、従来型の契約形態が残存する中で、改革の成果は上がっているというところには何らかの矛盾があることが予想され、この点について研究課題を設定すべきことが明らかになった。 実態と改革成果の矛盾については、平成23年度の研究成果として残した論文でも取り扱ったが、裁判事例も多数公開され始めており、これらの分析も欠かせない。また、農地制度改革の事例研究や制度分析という2次資料も最近かなり増えている。これらについては、西南大学法学院の黄毅副教授、アモイ大学の王虹教授、劉永光教授、李国安教授、上海大学の李鳳章副教授、北京大学の甘超英副教授などから多数の教示や現物の提供などを得ており、文献資料の収集ができた。 これらの収集資料に基づいて、本研究の分析対象である中国の土地所有権制度改革の枠組みについて論文を執筆し、本研究の課題の重要性と中間的な研究成果び残された課題を明らかにし、『中国年鑑』に掲載することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究については、重慶、アモイ、上海での実態調査を計画していたが、国際関係の影響もあり、先方において機関としての受け入れなどが難しく、その意味でやや研究に遅れが生じていた。しかし、従来からの研究者同士の個人的な人間関係を醸成していたため、メールでの資料提供や改革動向の情報提供を受けることができた。これにより、研究資料の収集という面においてはおおむね計画通りの質と量が確保できた。また、上述の経緯で入手した資料であるので、その信頼性も十分に高いものであるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本研究の最終年度となるので、これまでに得た研究資料の総括を行う必要がある。他方で、平成24年度に行えなかった現地調査を環境の許す限り行う必要もある。そこで、年度内前半を目途とする年度内の早い段階で重慶、アモイ、上海の各調査地を訪問して実態調査を行うものとする。これと併せて、研究で得た成果を海外共同研究者に開陳し、助言や批評を得ることも計画している。そのため、上記調査地のいずれかで、研究会を開く予定であり、現在日程や場所などを交渉中である。 具体的には、平成25年度もこれまでと同様に文献購入と実態調査を伴う国際研究者交流を中心に研究費を使用する。他方で、研究の総括のために資料整理も必要であるので、事務補助者の雇用も予定している。また、研究成果を内外で、論文ないし口頭での発表を予定しているので、そのためのネイティブチェックや内外の研究者との研究会の開催も企画しており、これにかかる諸費用に使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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