2011 Fiscal Year Research-status Report
政治部門の憲法解釈の実態把握とその規範的意義についての研究
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23730028
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
横大道 聡 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (40452924)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アメリカ憲法 / 公法学 / OLC / 内閣法制局 / 署名声明 / 政治部門の憲法解釈 / 拷問メモ / アメリカ |
Research Abstract |
本研究は、裁判所「以外」の政治部門(議会と執行府)の憲法解釈とそのあり方について、比較憲法的な見地から検討を行い、多元的な解釈主体によって構築される動態的な憲法秩序のあり様を明らかにするとともに、その規範的意義の検討を目的としている。平成23年度は、執行府の憲法解釈を研究対象に、アメリカにおける大統領の憲法解釈の一場面である「署名声明(signing statements)」をめぐる近年の政治状況の整理、そして、大統領の法解釈に対して法的アドバイスを与える役割を担う司法省の法律顧問局(Office of Legal Counsel, OLC)を検討対象に、執行府における憲法解釈の「実態把握」をしたうえで、その「規範的評価」を試みた。具体的には、(1)オバマ政権における執行府の憲法解釈をめぐる政治的動きを概観することを通じて、その解釈の「質」を確保することの重要性を確認した。そして、そうした役割を担う補佐機関の重要性を明らかにした。(2)執行府の憲法解釈の補佐機関の役割をめぐって、それを弁護士と顧客の関係に類似したものと捉える「アドボケート・モデル」と、司法と同様に憲法解釈すべきだとする「司法モデル」、そして、司法と全く同様にではなく執行府の一員としての立場で憲法の「もっとも良い意味」を探るべきだとする「準司法モデル」に整理したうえで、「準司法モデル」の優位性を論じた。(3)(2)の検討で得られた知見を、日本における内閣の憲法解釈補佐機関である内閣法制局に応用し、内閣法制局もまた「準司法モデル」で行動すべきと論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書では、本年度の研究計画として、次のように記載していた。すなわち、「執行府」の憲法解釈の実態把握とその規範的評価」を中心に研究を行う。具体的には、(1)大統領が法案の署名をする際に出される署名声明(Signing Statement)においてなされる憲法解釈について、オバマ政権の「実態把握」と「その規範的評価」と、(2)大統領の憲法解釈に対して法的アドバイスを与える役割を担う司法省の法律顧問局(Office of Legal Counsel)の「実態把握」とその「規範的評価」を試みる。この両課題ともに、関連する論文を公表し、成果を残すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、執行府から目を転じ、「議会」の憲法解釈についての研究を行うことにしたい。具体的には、平成23年度に、アメリカの連邦議会図書館の議会調査局(Congressional Research Service)に関するヒアンリング調査を行ったので、それを踏まえながら、同機関の「実態把握」とその「規範的評価」を試みることにしたい。また、余力があれば、連邦議会の委員会や憲法問題について開催された小委員会における議事録を参考にしながら、議会における憲法解釈がどのようになされているのかについての「実態把握」とその「規範的評価」も試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、基本的には、文献収集と現地調査のために研究費を用いる予定であるが、それに加え、日本において本研究に関連する研究を行っている研究者からのアドバイスをいただくとともに議論するための費用として、研究費を使用したい。
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Research Products
(2 results)