2012 Fiscal Year Annual Research Report
関係性の憲法理論―社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の憲法的価値
Project/Area Number |
23730032
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
岡田 順太 白鴎大学, 法学部, 准教授 (20382690)
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Keywords | 結社の自由 / 社会関係資本 / ソーシャル・キャピタル / 格差社会 / 憲法学 |
Research Abstract |
本研究は、憲法が保障する「結社の自由」の構造についての考察を目的とするものである。わが国の憲法学においては、自発的任意的に選択された人的結合が「結社」とされ、家族や地縁・血縁のような関係性とは基本的に性質を異にするものと理解されている。 しかしながら、折りしも東日本大震災後に重視された「絆」には、およそ「結社」とは異なる関係性が含まれており、そうした「絆」の意義について従来の憲法理論から説明することは困難が伴う。かといって、「絆」の果たした社会統合の機能を憲法学が無視する訳にもいかない。 そこで本研究は、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)論の観点から結社の自由の意義を考察し、関係性をめぐる憲法理論の再構築をはかることを企図して行われた。ロバート・パットナムの研究によれば、社会関係資本の豊かさが民主主義の水準の高さと相関関係にあるとされる。さらに、社会関係資本には、拘束型(bonding)と架橋型(bridging)とがあり、後者が民主主義の水準に関係するとされている。もっとも、拘束型社会関係資本も小規模な関係性にとどまる限り、民主主義に資するものと解される。この点は、アメリカの判例法理と奇妙な一致をみるところである。そして、注目すべきはそれらの関係性には必ずしも「自発性」や「任意性」、「選択」の要素は必要ないということにある。家族的な関係性から社団のような関係性までを「結社」として扱い、社会関係資本の観点から結社の自由の意義を捉え直すと、個人主義的観点からも評価しうる関係性を新たに見出すことができる。以上の点を研究期間中に明らかにした。 さらに考察すると、幸福追求権が包括しえない要素が結社の自由には存在することが推測されるのか、近代の個人像との関係はいかなるものかといった疑問点が生じてくるところであるが、そうした点については、今後の研究課題としたいと考えている。
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