2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730047
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
岡松 暁子 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (40391081)
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Keywords | 北極海 / 船舶起因汚染 |
Research Abstract |
北極海では近年、船舶起因の海洋汚染問題が深刻化している。この問題については、複数の沿岸国のうちカナダが、1970年に「北極海汚染防止法」を制定し、これを沿岸100海里にまで一方的に適用して規制を行ったため、アメリカを始めとする各国がこれに抗議した。その後、国連海洋法条約や「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書」等の国際的枠組における取組が進展したものの、実際にはこれらに関連する具体的実行に乏しく、現在でも以下のような諸規制とその解釈が複雑に錯綜している状況にある。 国連海洋法条約は、沿岸国による船舶起因汚染の防止措置について、国際基準に基づく法令制定権を規定しており、さらには当該規定が想定する一般的状況が不適合な場合についても、それ以上に厳しい内容の法令制定権が規定されている。しかし、後者の規定については、厳格な手続的要件を満たす必要があり、国連海洋法会議での起草中から、その適用には困難が予想された。そのため、「北西航路」を自国の内水とみなし、「北極海汚染防止法」の適用を主張するカナダは、第三次国連海洋法会議において、より緩やかな要件での規制が認められる「氷に覆われた水域」規定を主張し、その挿入に成功した。さらに、海洋法条約発効後は、本条にその根拠を置きながら、適用範囲の200海里への拡大、通航の際の事前通告をvoluntaryからobligatoryに変更する等、近時ではより一層の規制強化を図る実行を重ねている。対して、アメリカは、当該水域を「国際海峡」であると主張し、これら諸規定は当該水域に適用されない旨、国際海峡制度に関する規定を援用しながら主張している。 このように当該水域では、航行可能水域の拡大により、沿岸国に認められている汚染防止のための管轄権の対象や範囲が広がるという、従来の規制枠組の変化と対立の深刻化が見られるのである。
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Research Products
(1 results)