2012 Fiscal Year Research-status Report
競争規制の歴史的成立をめぐって――ホームズの理論的寄与――
Project/Area Number |
23730050
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
滝澤 紗矢子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40334297)
|
Keywords | 経済法 / ホームズ / 競争規制 / 占有 |
Research Abstract |
平成24年度は、アメリカ合衆国における競争規制の成立に、オリバー・ウェンデル・ホームズ・Jr.の思想がどのように寄与したかを探求するという研究目的の下、Morton J Horwitz, "The Transformation of American Law 1870-1960" (Oxford University Press, 1992) 第4章 'The Place of Justice Holmes in American Legal Thought' の先行研究を主な手がかりとして、Oliver Wendell Holmes, Jr., "The Common Law" (1881) とりわけ第6講 'Possession' を精読した。具体的には、私的取引に対する規制に極めて謙抑的な態度をとる自然権的思考が隆盛していた19世紀後半において、ホームズがどのように思想的転回を図ったかを探求した。精読の結果、ホームズが次の点から競争規制の基礎、すなわち政府が私的領域を規制することを可能とする理論的基盤を提供したことを確認した。第一に、占有の説明に行き詰まるところから、意思の自由を出発点として私有財産を正当化する自然権的思考に限界があることを示した点、第二に、自然権的思考の下では権利から発想するのが当然であった枠組みを根底から覆し、法的権利の前に義務がくるベキことを主張し、さらには権利と義務の間の相関関係をも切断した点、第三に、権利義務は法以前に存在せず政策に基づいてこそ法ルールが形成されることを示して、一定の政策に基づいて政府が私的取引を規制する理論的可能性に道を開いた点。 本年度の検討から、競争規制の成立に対するホームズの思想的寄与の一端を示すことができたが、判例に表れたホームズの意見に照らしつつ、さらにその全体像を示すところまでは、本年度には到達できなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に予定されていた研究内容自体は概ね達成し、研究成果の一部も公表できた。しかし、その研究成果について、アメリカ合衆国に渡航して、主にハーバードロースクールに在籍する研究者と直接意見交換をする予定でいたところ、妊娠・出産のため渡航がかなわず、その機会を逸してしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は育児休業から職務復帰する予定であるため、限られた期間および研究手法を余儀なくされるが、平成23年度および平成24年度の研究成果をもとに、競争規制に関する諸判決に表れたホームズの意見と各著作に表れたホームズの思想との関係をより緻密に探求し、平成26年度に成果として公表する準備としたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、本年度予定していた海外渡航の妊娠・出産による中止、効率的な研究の推進、そして産前産後休暇の取得に伴う研究活動の中断によって発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、次年度以降に計画している研究の遂行に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)