2011 Fiscal Year Research-status Report
放送・通信分野の企業結合における「二元規制」の在り方に関する総合的研究
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23730054
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
林 秀弥 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (30364037)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 情報通信市場 / ICT市場 / 移動体通信市場 / インターネット / プラットフォーム事業者 / コンテンツ・アプリケーションレイヤー / 競争政策 / 企業結合規制 |
Research Abstract |
平成23年度の研究成果は以下の通りである。 すなわち、インターネットの普及、とりわけスマートフォン・タブレットなどワイヤレス・ブロードバンド・インターネットへの常時アクセスの急速な普及を通じて、ECマーケット(例:Amazon)、クラウド(Apple, App Store、Google, Android Market)やソーシャルネットワーク(例:Facebook)などいわゆるプラットフォーム事業者の急速な業容拡大が続いているが、このような状況は、コンテンツ供給者やネットワーク事業者、端末メーカーなどICT産業を構成する各層に大きな影響を与えている。 さらに、このような変化を通じて、ICT市場のプレイヤーは、特に移動通信市場においては、コンテンツ・アプリケーションの開発事業者、検索・ソーシャルネットワーク・アプリマーケット等のプラットフォーム事業者、スマートフォン・タブレット端末・携帯ゲーム機器等のメーカー(端末レイヤー)等、多種多様化しており、これらの事業者が各々のレイヤーの市場を超えて、業務提携や資本提携(M&A)により財やサービスを提供しており、特に我が国においては、ネットワーク事業者に対する競争評価の在り方においてプラットフォーム事業者の市場支配力をどのように扱うかという課題が生じている。これらの点を平成23年度は解明することができた。 加えて、情報流通の爆発的な増大・蓄積及びデータマイニング技術の発展は、ビッグデータと呼ばれる新たな高付加価値ICTサービスに対する期待を高めつつも、その一方で個人情報保護の適正な利用の確保などに対する懸念も生じさせつつあり、EU委員会ではデータ保護規律の見直し案を提示するなど制度的対応も行われている。 これらの点について、平成23年度においては、企業結合規制に焦点を当てて、比較法的分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、平成23年度において、以下の点を分析した点において、おおむね順調に進展していると評価できる。(1)ICTサービスの市場構造変化:近年のインターネットの急速な普及は、電気通信市場の構造をどのように変化させているか。特に、検索サービス、クラウド(マーケット)、ソーシャルネットワークなどプラットフォームについては、一般にネットワーク効果を有するため事業者の集中が起こりやすいといわれているが、プラットフォーム事業者の寡占状況と、それによる情報通信市場全体への影響は、どのように評価されるかについて、分析が行われていること。(2)世界的に寡占性や情報流通の集中を高めているプラットフォーマー(例:Google(検索、OS、アプリマーケット)、Apple(OS、アプリマーケット)、Facebook(SNS))の状況について、各国で競争法上の問題意識はどのように醸成されているか。また、プラットフォーマーのコンテンツ提供者に対する審査基準や、個人情報を含む膨大な情報の蓄積により、情報通信市場にどのような影響が及ぶかについて、分析が行われていること。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、以下の2点について、研究を進めることを企図している。(1)ICTサービスの市場構造変化に対する認識について:近年のインターネットの急速な普及は、電気通信市場の構造をどのように変化させているか。特に、検索サービス、クラウド(マーケット)、ソーシャルネットワークなどプラットフォームについては、一般にネットワーク効果を有するため事業者の集中が起こりやすいといわれているが、プラットフォーム事業者の寡占状況と、それによる電気通信事業、放送事業に対する影響はどのように評価されるか。(2)わが国の「「競争評価」の現状と課題:我が国(日本)では、EUのSMP規制における市場分析と類似の仕組みとして、「電気通信事業者のみ」については、毎年度、各事業者間の市場競争の状況を分析・評価している(2003年度から実施しており、評価結果は政策の企画・立案等に活用(この点、評価結果が規制につながるEUの制度とは異なる)。しかしながら、移動体通信市場については、ネットワークレイヤー以外のコンテンツ、プラットフォーム、端末の各レイヤーとの相互関係を見なければ市場の実態を的確に把握することが困難な状況となっている(背景には、いわゆるGang of fourと呼ばれるネット企業の存在やそれに伴うネットワーク事業者側のネットワークの土管化の懸念がある)。そこで、従来の電気通信事業者のネットワークレイヤーのみを捉えた市場分析の在り方をどのように見直していくかが喫緊の検討課題となっており、今後の情報通信分野全体を見渡した市場の分析の手法として、どのような考え方があるのか、各国の状況も踏まえて検討を行うことを本研究の平成24年度における課題とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度と同様、旅費を中心に研究費を支出する予定である。というのも、本研究は、上記プラットフォーム事業者を中心とするICT市場の構造変化について、日米欧主要各国において通信法制、競争法制や個人情報保護法制においてどのような対応が講じられているか、あるいは今後講じる予定があるのか、問題意識も含め、各国の行政当局及び関係事業者からヒアリング・実態調査を行うことを研究の柱にしているからである。。
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Research Products
(13 results)