2014 Fiscal Year Annual Research Report
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23730061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 亮介 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90345249)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 責任能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
責任能力制度について、ドイツの学説、アメリカの判例法理について研究を進めるとともに、日本の歴史についても調査を完了することができた。 ドイツにおいては、期待可能性の枠組みの中で、犯罪誘因環境と同質のものとして精神病を位置づける見解が通説的である。しかし、少数説ながら、刑罰が非難であることを踏まえて、刑罰を受け止めるコミュニケーション能力として責任能力を理解する学説が存在することを明らかにすることができた。 アメリカにおいては、責任能力の廃止という動きもある中で、なお責任能力制度を何らかの形で維持するのが一般的であり、それは刑罰の基礎にある応報・非難によって支えられていることが明らかになった。さらに、責任能力の基準について、5種類もの議論が提起されているところ、責任非難という大きな枠組みは共通していても、その具体化の在り様は、時代・国・社会の評価によって異なることが明らかにできた。 日本においては、事理弁識能力、及び、事理・正しさに従う行動制御能力という一般的フレーズが使用されているものの、実際の裁判例においては完全に齟齬をきたすような精神病の影響の程度が問題にされている。その歴史的背景を探索した結果、事理弁識能力・行動制御能力というフレーズがそもそも実態を伴わないものとして導入されており、実際には、精神病の進度の重症度合いを法律家が線引きして責任の存否を判断するという枠組みであることを明らかにすることができた。
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