2013 Fiscal Year Research-status Report
性犯罪と裁判員裁判の研究―裁判における課題と量刑・処遇・対策へのインパクト
Project/Area Number |
23730070
|
Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
平山 真理 白鴎大学, 法学部, 准教授 (20406234)
|
Keywords | 裁判員裁判 / 性犯罪 / 量刑 / 性犯罪者対策 / 性犯罪者処遇 / 性犯罪被害者 |
Research Abstract |
本年度は米国の陪審裁判において性犯罪、児童虐待、DV事件を審理する際の課題について焦点を当て研究を行った。具体的にはこれらの事件を中心とした陪審裁判や陪審選任手続を傍聴し、またこれらの事件の弁護を受任した弁護士などにインタビューを行った。陪審裁判と裁判員裁判では制度としての違いも多いが、しかし性犯罪事件の審理に市民感覚が入るということは、とくに弁護方針においては共通の課題があるように思われる。このため、サンフランシスコ郡公設弁護人事務所において開催された、性犯罪事件の弁護経験が豊富な弁護士によるセミナーに参加できたのは(2013年10月)、本研究にとって重要な情報を収集するうえで有益であった。 ところで、女子受刑者の中には過去に性被害経験を持つ者も少なくないという問題に注目し、ワシントン州の重警備女子刑務所を訪問し、生命尊重と就労支援に重点を置いた更生プログラムを視察した(2014年2月)。 また、米国の陪審制度研究の第一人者でもあるValerie Hans教授をコーネル大学に訪問し、陪審制度の課題についてインタビューすることができた。教授のもとで各国の裁判の市民参加制度について研究する学生や研究者と意見交換できたことも大きな成果であった。 また、研究成果の外部への発表については5月に法社会学会、同月にアメリカ法社会学会、11月にアメリカ犯罪学会、と計3回の学会報告を行うことができた。これらの報告については、国内外の研究者から、わが国の性犯罪裁判員裁判の課題について様々なコメントを得ることができたので、今後の研究の指針としたい。また、以上の研究成果は論文3本、書籍(共著)1冊としてまとめることができた。更に、他大学の教員が担当する講義におけるゲスト・スピーカーとして、学生向けに本研究について発表する機会を持てたこと(国内1回・アメリカ3回)も、研究成果の社会への発信として重要であったと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市民参加型の裁判で性犯罪、DV、児童虐待事件を審理する際の課題についての考察、という本研究の目的に沿い、わが国や英米におけるこれらの裁判傍聴や、弁護人等へのインタビューを進めている。更に、性犯罪者の社会再統合を目的としたプログラムについても、英国で実践されている「支援と責任のサークル、CoSA」を訪問することができた。また本年度は、女子受刑者の過去の被害者性(性犯罪被害歴)にも注目し、女子刑務所(ワシントン州)を訪問することができた。また、本年度の研究成果の社会への発信については、学会報告3件、論文3件、書籍1件というかたちで発表することができた。一方、研究計画の中で当初予定していた海外調査先である、イタリア、ドイツの市民参加型裁判で性犯罪事件を審理する際の課題についてはまだ調査研究を遂行していないが、最終年度である平成26年度中にこれらの海外調査についても行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
市民参加型の裁判で性犯罪事件を審理する際の課題を各国のそれぞれの制度別に比較しながら論じ、まとめたい。とくに、当初の研究計画で予定していたイタリア、ドイツにおける市民参加型裁判で性犯罪事件を審理する際の課題を考察するために、これらの国を訪問調査し、裁判傍聴や弁護士等へのインタビューを行いたい。 また、大阪府の「子ども条例」においてはすでに採用されているが、刑事施設から出所後の性犯罪者に対し、その居住地情報等の届出義務を課すべきである、とする考えが各自治体を中心に高まっている。これらの条例が再犯防止に果たす現実的機能の検討や、プライヴァシーへの介入という副作用についても今後は検討を行いたいと考えている。 ところで、次年度は研究計画の最終年度であることから、本研究をまとめることに焦点を当てたい。その中でも研究成果の社会への発信は積極的に行う予定である。まずは、2014年6月に大阪で開催される第6回アジア犯罪大会において「To Which Direction the Criminal Justice Policy for Sex Crime Proceeds in Japan- Impacts of the Lay Judge System」とするセッションをオーガナイズし、また性犯罪と裁判員裁判についての報告も行うことを予定している。この他にも積極的に学会や論文において研究成果を社会に発信し、そこで他から得られるコメントを指針として、本研究成果の報告書をまとめるたいと思う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、当該年度研究調査を予定していたイタリア、ドイツへの訪問がスケジュール調整の関係で翌年度に延期としたからである。 今年度は上述のようにイタリア、ドイツにおける市民参加型裁判で性犯罪事件が審理される際の課題について、これらの国への海外調査を行い、裁判傍聴や弁護人等へのインタビューを行う。また、これまでに引き続き、我が国の裁判員裁判において性犯罪事件が審理される際の課題の考察も行う。
|
Research Products
(8 results)