2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730125
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小山田 朋子 法政大学, 法学部, 教授 (50436507)
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Keywords | 国際情報交換 / 医学研究 / 利益相反 / アメリカ法 / インフォームド・コンセント / 医事法 / 信託法 / 代理法 |
Research Abstract |
本研究がテーマとしているのは、医学研究における利益相反問題(産学連携により、産業界から大学や医師へ資金が提供され、医師の利害が被験者の利益と対立しうることおよび研究の科学的妥当性をも損ないうるという問題)である。わが国でも産学連携が国家戦略とされる中、利益相反問題への対応が急がれている。本研究は、この問題でわが国の20年先を行っていると評されるアメリカ法を研究対象とし、わが国のあるべきルールを探ることを目的としている。本年度は主に以下の方法で研究および成果の公表を行った。 1.アメリカ法の調査により、以下のことが明らかになった。2010年3月に連邦議会を通過したPhysician Payments Sunshine Actは、10ドルを超える製薬企業等から医師への贈与につき政府への報告を医師に義務づける内容である(公表については、2013年3月からの施行予定であったが延期され、2014年3月から施行となった)。本法の内容および、賛否論につき、整理した。 2.日米の法学者・弁護士・医師からなる研究会(「医療の発展と患者の保護をめぐる倫理・法の現代的課題に関する研究」(岩田太教授代表・厚生労働科学研究費補助金)に参加した。 3.トラスト60「アメリカ代理法研究会」(樋口範雄教授代表)に参加し、日米の代理法についての書物の執筆に加わった。(翻訳の一部および以下の章を担当)。担当した章では、代理法に関わる現代的な問題のひとつである、「フランチャイジーの不法行為に対するフランチャイザーの代位責任の問題」につき、アメリカの近年の判例・学説を整理した。 4.トラスト60「アメリカ信託法研究会」(樋口範雄教授代表)に参加し、信託法第3次リステイトメントの条文の一部の翻訳および「復帰信託」のテーマにつき報告を行った。 5.上記1の内容につき、第48回医学系大学倫理委員会連絡会議で指定発言を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマは、医学研究における利益相反問題(産学連携により、産業界から大学や医師へ資金が提供され、医師の利害が被験者の利益と対立しうることおよび研究の科学的妥当性をも損ないうるという問題)である。わが国でも産学連携が国家戦略とされる中、利益相反問題への対応が急がれているが、その中、研究倫理をめぐる問題が複数報道され、ルール作りを目指す議論が活発化した。上述の学術会議はそのひとつであり、この問題をめぐる議論や現状報告が、医療、法、その他の立場からなされた。そのような背景で、本研究の成果を発言する機会を得て、議論に参加することができた。 また、本研究の柱の1つとしている「信託法」の研究では、アメリカの第3次リステイトメントを研究する研究会に参加する機会を得た。第3次リステイトメントの翻訳およびわが国との比較を行うことにより、理解を深めることができた。また、アメリカの信託法の一人者であるデイビッド・イングリッシュ教授より、統一信託法典とリステイトメントの異同等につき、聞き取り調査をすることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、2つの方向で研究を進める方針である。ひとつは、利益相反および研究倫理をめぐるルールにつき調査し、日米比較を進める。特に、今年施行された、アメリカのいわゆる「サンシャイン法」の運用とその影響に注目する。また、わが国では、昨年から今年にかけて報じられた研究倫理と関わる問題を受けて、厚生労働省および製薬協等がルール作りを進めている。それらの動きにも着目しつつ、日米比較を進める。 第2の方向として、信託法研究を進める。「利益相反」概念の源流であるアメリカ信託法の全体像および現代的問題につき、理解を深め、医学研究分野に応用できる範囲を探る。アメリカ法において、信託法から派生している信認法の重要な概念のひとつが「利益相反」であるため、この概念とそれが生まれた文脈である信託法につき理解を深めることは、本研究にとって有意義であると考えている。 以上の方向で研究を進め、最終年度である次年度には、この問題につき、わが国の採るべき方策につき考察を進め、研究を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外からの注文図書等の納入の遅れ等のために、次年度使用額が生じた。 使用計画としては、すでに注文した図書の支払いと、引き続き、関連文献等の収集、聞き取り調査等の費用に充てる計画である。
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Research Products
(2 results)