2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730126
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上野 達弘 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80338574)
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Keywords | フェアユース / 権利制限 / 著作権 |
Research Abstract |
本年度は、当初計画に沿い、著作権の制限規定の在り方をめぐる国際的な議論の調査を継続しつつ、英米法における著作権法上の権利制限規定について研究を深めた。ちょうど、2013年11月14日に、Google Booksをめぐってニューヨーク連邦地裁の判決が出され、同サービスにおける情報の蓄積とスニペット表示について、アメリカ著作権法上のフェアユースに当たると判示されたため、その是非をめぐって大きな話題となっている。また、イギリスにおいては著作権法改正の動きが確定し、その中で私的複製やパロディといった権利制限規定が重要な課題となっている。 さらに、2013年12月5日から2014年3月5日まで、EUにおいて欧州著作権制度に関するパブリック・コンサルテーションが行われ、そこでも、権利制限規定の在り方が重要なテーマになっている。とりわけ、個別規定による権利制限規定のみならずより柔軟な権利制限の必要性について幅広く意見を集めようとしている点は、日本の議論にも直結するものであり大変興味深い。その上、オーストラリアにおいても、権利制限の一般条項の是非をめぐって再び議論が盛り上がっている。 以上のように、権利制限規定をめぐって国際的に極めて議論が盛んになっている。こうした動向は、本研究の計画段階でもある程度は想定したものであったが、その予想を上回るものであった。 そこで、上野はこうした動向をフォローするのはもちろんのこと、これをめぐる膨大な議論を幅広く検討し、わが国における議論と関係する視点が多数得られた。また、権利制限の一般条項と条約上のスリーステップテストの関係についても、国際的な議論の中で考察を深めることができた。 そうした研究の成果として、12月7日に、カリフォルニア大学のPamela Samuelson教授を招聘してシンポジウムを開催するなどした。その他は研究発表リストを参照されたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述したように、当初の研究計画を実施できたのみならず、当初の研究計画には予定されていなかった国際的な議論に接して、大きな研究成果を挙げることができた。 具体的には、先述のように、(1)アメリカにおける最新の判例が登場し、これをめぐる議論が盛んに展開されたこと、(2)イギリスにおいて権利制限を中心とする著作権法改正の議論が進展したこと、(3)欧州レベルで権利制限を含む論点に関するパブリック・コンサルテーションが行われ、これをめぐって議論が繰り広げられていること、(4)オーストラリアにおいても権利制限の一般条項を設けるべきかどうかが再び議論されたこと、などが挙げられる。 このように検討すべき課題や議論が増えているということは、それだけ研究の対象が豊富になったことを意味し、これによって当初予定を上回る研究を進めることができている。また、こうしたことによりシンポジウムや研究会などの機会も増えていることから、当初予定以上に、研究成果を公表する機会にも恵まれている。 以上のことから、当初の計画以上に進展していると自己評価した次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であり、当初計画通り、海外における国際的議論の調査を踏まえて、わが国著作権法上の権利制限規定に関する望ましい立法論についてまとめ、これを国内外に発表する。これまで、国内においても、国外においても、権利制限規定をめぐる議論が非常に盛んに行われてきたため、次年度の研究を進めるための蓄積は大変充実したものとなっている。日本における権利制限の在り方を考えるのみならず、ヨーロッパ大陸法における立法論としてもその研究成果を発表していきたい。昨今のヨーロッパにおける議論の盛り上がりからすれば、日本における議論の蓄積はきっと注目されるものと考えている。 また、当初研究計画にもあるように、本研究の集大成として、知的財産法の基礎理論について研究を発展したいと考えている。著作権法上の権利制限規定というものについて、単に表面的な研究をするのではなく、その規定の在り方について、その背景にいかなる考え方があるのかという点に注目して、知的財産法に関する基礎理論についての知見につなげたいと考えている。
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Research Products
(15 results)