2011 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本政党政治における社会民主主義の位置―民社党の挑戦1960~1971―
Project/Area Number |
23730153
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
城下 賢一 立命館大学, 文学部, 講師 (70402948)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 蝋山政道 / 社会民主主義 / 政党政治 / 民社党 / 戦後日本政治史 / 福祉国家 / 圧力団体 / 経路依存性 |
Research Abstract |
2011年度は、初年度として、史資料収集を中心に行った。(1)東京(8-9月と3月に計4回)、名古屋(3月)に計5回の出張を行い、国立国会図書館、東京大学総合図書館、国立公文書館、名古屋市市政資料館、愛知県公文書館などを訪問し、雑誌論文、行政資料、私文書等の収集を行った。雑誌論文の収集にあたっては、『蝋山政道著作目録』を参考にし、その他ciniiなどのデータベースで補った。(2)蝋山は雑誌のみならず新聞への投稿も多いが、これらはこれまで網羅的に集められてこなかった。幸い、近年では新聞各社のデータベースが整備されてきている。これらを利用し、新聞投稿についても年次ごとに収集を進めた。(3)蝋山政道の著作や民社党関係の刊行物について収集し、閲覧した。図書館では多く断片的にしか集められていないため、古書による購入を進めた。関連する研究についても同様に収集・閲覧を行った。これらにより、史料や先行研究について、整理把握し、問題の所在を検討した。(4)当該テーマに関連する内容について、2本の論文(「占領期の遺族厚生連盟の活動とその政治的影響力」『立命館大学人文科学研究所紀要』97号、「日本型福祉国家と農業団体―共済制度の経路依存性効果と分立型年金への道」『創造都市研究』7巻2号)を執筆し、発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画にあたっては、研究の進行を3段階に分けてこれを行うものとした。このうち、第1期は本研究のテーマに関わる文献・史料の収集や先行研究の整理を行い、第2期は社会民主主義勢力の知識人のうち、代表的な人物として蝋山政道を取り上げ、その思想と政治認識、具体的な政治行動について検討するとした。その上で、初年度には第1期の作業を行うほか、第2期の作業についても着手するとした。実際の作業については、研究実績の概要に記載の通り、蝋山政道を中心に史資料収集を進め、今後の公表論文としての成果に結実させるため、その内容把握や分析を行った。この内容は第1期、第2期の計画内容に相当する。作業の結果として、追加的に収集・調査が必要な分が発生しているが、それらは補助的な範囲の量である。この他、当該テーマに関連する内容について2本の論文を執筆し、発表を済ませた。従って、初年度の作業の結果は、おおむね順調に推移していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
社会民主主義勢力の知識人のうち、代表的な人物として蝋山政道を取り上げ、その思想と政治認識、具体的な政治行動について検討する。蝋山については近代日本の知的巨人の一人として多くの先行研究があるが、これらを批判的に摂取しつつ、戦後の社民勢力との関わりを中心にして彼を論じる。こうした視点はこれまでなかった。民社党の理論的指導者としての彼の社会民主主義理解が形成された経緯や、民社党結党後、同党の勢力拡大失敗の過程で、彼の思想や情勢認識には変化が迫られたと考えられるが、その具体的な在り様を明らかにする。具体的な問題としては、1960年総選挙での惨敗、安保闘争、公明党の出現による多党化の進展などが想定される。これらの出来事に対する蝋山の思想的対応の理解と、その全体的把握を目指す。なお、その他の主な知識人(関嘉彦、中村菊男、武藤光朗、猪木正道ら)については、蝋山の社会民主主義理解との関係のなかで副次的に検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度(平成23年度)の研究費に未使用額が生じた背景として、第一に出張の際、史資料の複写費用について見積もっていた分が、複写方法を変更するなどにより当初の予定より費用がかからなかった。第二に、史資料の複写方法が変更可能な資料館が多かった。第三に出張をまとめて行ったことによって、旅費に見積もっていた額が当初の計画から大きくずれる事となった。次年度は、史資料の複写を依頼によってしか出来ない国立国会図書館やILL等を対象に資料収集を行うため、今年度未使用額も含めて、次年度交付額を計画通りに使用する見込みである。
|