2012 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本政党政治における社会民主主義の位置―民社党の挑戦1960~1971―
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23730153
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
城下 賢一 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (70402948)
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Keywords | 蝋山政道 / 社会民主主義 / 政党政治 / 民社党 / 戦後日本政治 / 福祉国家 / 圧力団体 / 経路依存性 |
Research Abstract |
本研究は、民社党の結成から展開の過程を、知識人を軸に検討することにより、戦後日本において社会民主主義勢力の形成がどのように行われたか、また、なぜ勢力拡大が政治的に成功しなかったのか、さらに、そこで蓄積された議論にはどのような特色があり、引き出すべき「成果」があるのかについて論じようとするものである。 2012年度は、計画2年目として、史資料収集と原稿執筆を中心に行った。(1)東京出張(8-9月に計2回)を行い、国立国会図書館、東京大学総合図書館、国立公文書館、友愛労働歴史館などを訪問し、雑誌論文、行政資料、私文書 等の収集を行った。(2)蝋山政道の著作や民社党関係の刊行物について収集し、閲覧した。2011年度には1955-65年を中心に収集・閲覧を行ったが、2012年度には1955年以前と1965年以降をも対象にし、時期ごとの内容について整理・類型化を行った。それぞれの個別の論点を関連する研究についても同様に収集・閲覧 を行った。これらにより、史料や先行研究について、整理把握し、問題の所在を検討した。(3)当該テーマに関連する内容について、原稿執筆と学会・研究会報告を行った。2012年度中に公刊されたものとして、城下賢一「治山治水特別会計をめぐる政治過程」『土木史研究講演集』32号、2012年がある。同一報告を土木学会土木史研究会2012年大会(日本大学)にて報告した。他の原稿についても、2013年度の成果発表・公刊を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史資料収集を進め、その内容把握や分析を行った。当該テーマに関連する内容について1本の論文を執筆し、発表した。同一内容の学会報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
社会民主主義勢力の知識人のうち、代表的な人物として蝋山政道を取り上げ、その思想と政治認識、具体的な政治行動について検討する。蝋山については近代日本の知的巨人の一人として多くの先行研究があるが、これらを批判的に摂取しつつ、戦後の社民勢力との関わりを中心にして彼を論じる。こうした視点はこれまでなかった。民社党の理論的指導者としての彼の社会民主主義理解が形成された経緯や、民社党結党後、同党の勢力拡大失敗の過程で、彼の思想や情勢認識には変化が迫られたと考えられるが、その具体的な在り様を明らかにする。具体的な問題としては、1960年総選挙での惨敗、安保闘争、公明党の出現による多党化の進展などが想定される。これらの出来事に対する蝋山の思想的対応の理解と、その全体的把握を目指す。 なお、その他の主な知識人(関嘉彦、中村菊男、武藤光朗、猪木正道ら)については、蝋山の社会民主主義理解との関係のなかで副次的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた背景として、第一に、出張の際、史資料の複写費用について見積もっていた分を、複写方法を工夫するなどによって節約することができた。第二に、史資料の複写の工夫を行うことが可能な史料館が多かった。第三に、出張をまとめて行うことによって、旅費の節約が可能になった。次年度には、これらを有効に活用し、必要な範囲で史資料の複写を積極的に行う。また、研究成果発表のため学会・研究会での報告を複数予定しており、それらに関する旅費が多く必要になる。このため当該年度ほどの節約はできない見込みである。
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