2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本政党政治における社会民主主義の位置―民社党の挑戦1960~1971―
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23730153
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
城下 賢一 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (70402948)
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Keywords | 蝋山政道 / 社会民主主義 / 政党政治 / 民社党 / 戦後日本政治 / 福祉国家 / 圧力団体 / 経路依存性 |
Research Abstract |
2013年度は、計画3年目として、史資料収集のほか論文・学会発表を行った。主な内容は以下のとおりである。 (1)Ochiai Emikoとの共著であるPrime Ministers' Discourse in Japan's Reforms since the 1980s: Traditionalization of Modernity rather than Confucianismが刊行された。政府や市場とともに福祉生産の主体となる家族について、国会会議録をもとに戦後首相の言説を抽出・分析した。 (2)北山俊哉との共著である「日本 福祉国家発展とポスト類型論」が公刊された。日本における福祉国家の発展について、その前史となる戦前から現代までを対象に述べた。 (3)翻刻作業に加わった『河上丈太郎日記』が刊行された。民社党グループと思想的・人的に近く、日本社会党委員長を務めた河上丈太郎の日記は、日本の社会民主主義研究にとって重要な史料である。 (4)日本選挙学会、The European Association for Jewish Studies(EAJS)、韓国・東北アジア文化学会、Nordic Association Nordic Association for the Study of Contemporary Japanese Society(NAJS)など国内外の学会で報告を行った。このうちNAJSでは戦後日本の社会民主主義について、民社党に即し、なぜ伸長しなかったか政策や言説、選挙基盤などを分析した。 (5)史資料収集について、東京出張(6月1回、8月3回)を行い、国立国会図書館、東京大学総合図書館、東京都立図書館などを訪問し、研究課題に関する史資料や書籍等を閲覧し、手許に必要なものについては複写した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画にあたっては、研究の進行を3段階に分けてこれを行うものとした。このうち、第1期は本研究のテーマに関わる文献・史料の収集や先行研究の整理を行い、第2期は社会民主主義勢力の知識人のうち、代表的な人物として蝋山政道を取り上げ、その思想と政治認識、具体的な政治行動について検討し、第3期に蝋山を中心に、知識人を軸に社民勢力内の他のアクターとの関係、また自民党や社会党など、他の政治勢力との異同について解明するとした。 この計画に対応して、3年目の平成25年度には、(実績の概要に記した通り)当該テーマに関連する内容について2つの論文を執筆し、1つの史料集が刊行され、1つの書評を執筆した。この他、4つの国内外の学会に報告者として参加し、1つの日本語での報告、3つの英語での報告を行った。また、補充的に史資料収集を進め、その内容把握や分析を行った。 したがって、平成25年度の作業の結果は、おおむね順調に推移していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
社会民主主義勢力の知識人のうち、代表的な人物として蝋山政道を取り上げ、その思想と政治認識、具体的な政治行動について検討する。蝋山については近代日本の知的巨人の一人として多くの先行研究があるが、これらを批判的に摂取しつつ、これまで取り上げられてこなかった戦後の社民勢力との関わりを中心にして彼を論じる。民主党の理論的指導者としての彼の社会民主主義理解が形成された経緯や、民社党結党後、同等の勢力拡大失敗の過程で、彼の思想や情勢認識には変化が迫られたと考えられるが、その具体的な在り様を明らかにする。具体的なトピックとしては、1960年総選挙での惨敗、安保闘争、公明党の出現による多党化の進展などが想定される。これらのトピックに対する蝋山の思想的対応の理解と、その全体的把握を目指す。 上記のため、蝋山の社会民主主義や福祉国家に関する膨大な著作を収集・分析してきたものの、なお検討が必要と思われる文献について作業が完了していない。最終年度ではこれらの作業を完了させ、さらなる原稿執筆を行うものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究課題の主要対象である蝋山政道について社会民主主義や福祉国家に関する膨大な著作を収集して分析してきたものの、社会民主主義や福祉国家に関する論稿の数が想像以上に多く、また彼の言及する論稿についても閲覧し、思想継受の関係などについての検討を加えている。そのため、収集後の分析に想定以上の時間が必要になっているため、文献複写費や文献複写のための旅費が十分に執行されておらず、残額が発生することになった。 収集・分析が必要なもののうち、なお収集ができていない文献についてその複写のために使用する。その際、必要となる文献は多く国立国会図書館東京本館に所蔵されているため、居住地からそちらに移動するための旅費にも使用する。
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